2019 Fiscal Year Research-status Report
13CO2投与と顕微サンプリングによる樹木リグニンの部位選択的高感度構造解析
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19K06168
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
青木 弾 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (80595702)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 13CO2 / リグニン / NMR |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞壁主要成分のひとつであるリグニンは、組織・細胞の顕微スケールにおいても不均一な構造と分布を有しており、その生合成機構が緻密に制御されている可能性が示唆されている。しかしながら現時点においてリグニンの構造情報を最も網羅的に解析可能な13C-NMR(核磁気共鳴)法は、必要な試料量がガスクロマトグラフィー等の分解分析法と比べて圧倒的に多く、微小領域の試料のみを対象としてNMR分析を行うのは非常に困難である。ここでNMR分析感度のボトルネックは、13Cの天然存在比が1.08%と低いことである。そこで本研究では、独自に開発した環境制御型グロースチャンバー(基盤研究(C)15K07510)を用いて13CO2を投与しながら植物を育成し、高13C試料を得る。さらに特定部位の個別収集を行い、NMR法を用いた詳細な構造解析を行う。植物体内における顕微スケールのリグニン構造に関する知見を集積し、植物の精緻なリグニン生合成制御の顕微的実態に迫る。 初年度では計画通りにクロマツ苗木を育成し、CO2投与量や気温・湿度の制御について検討した。さらに得られた試料について以下の分析を行った。切片作製および顕微鏡観察により当年輪部の成長状態について確認した。チオアシドリシス法およびニトロベンゼン酸化法によりリグニン化学構造に関する基本的な情報を得た。固体NMR分析および誘導体化を経た液体NMR分析に供し、詳細な二次元NMR解析を行った。得られたデータについて、既報との比較を行い、天然状態と遜色ない細胞壁試料を得られたことを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
13CO2は納期が長く、初年度では実験には使用できない。初年度ではまず密閉系におけるクロマツ育成のメソッド確立を目指した実験を行った。また得られた試料について、限られた量のサンプルに対してシステマティックに各種分析法を適用するための手順を確認した。当初計画通りに実験を実施できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
育成実績のある環境条件の下、既に準備済みの13CO2を用いてクロマツの育成を行う。これまでに確立された各種分析手法を用いてリグニン化学構造ならびにその形成過程を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2020年3月に予定されていた日本木材学会に出張し、情報収集を行う予定であったが、新型コロナ感染症の影響により学会が中止されたため、予定していた出張費を繰り越す必要が生じたため。
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