2019 Fiscal Year Research-status Report
マツタケ単核体の取得、および遺伝子導入と破壊法に関する研究
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19K06175
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
福田 泰久 近畿大学, 農学部, 講師 (80609602)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マツタケ / トキイロヒラタケ / 遺伝子組換え / 単核体 / 担子菌 / 色素タンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
マツタケにおけるターゲット遺伝子の破壊、および外来遺伝子の挿入はいまだ成功例がない。本課題の初年度では、マツタケの大量プロトプラスト作出法の確立とマツタケの単核菌糸体を取得することを目的に実験を行った。細かく切り刻んだマツタケ菌糸体を、大量の個体培地で生育させ、新鮮な菌糸をYatalase(タカラバイオ)処理することにより、従来の数百倍量のプロトプラストの取得を試みた。しかしながら、現段階では軽質転換に用いる単核体ホスト株の取得に至っていない。その再生率の低さをカバーするような、再生培地の検討やプロトプラストの精製法を検討中である。 トキイロヒラタケにおいては、形質転換が容易に行える状態になった。本課題のテーマの一つである色素タンパク遺伝子(PsPCP)の過剰発現(センス鎖挿入)および抑制発現(アンチセンス鎖挿入)に使用できる可能性が見いだされた(アンチセンスRNA法)。これにより、塩基配列が分かればある程度の正確性を持って、ターゲット遺伝子を抑制できることが可能になった。現段階で、実際にピンク色の子実体を形成するトキイロヒラタケのPsPCPをアンチセンスRNA法により抑制させた形質転換株を取得して栽培したところ、白色の子実体原基を形成した。これは本研究課題のうちの1つのテーマを、達成したことになる。 初年度は、本研究課題に関連する社会への報告として、トキイロヒラタケ色素タンパクに関する論文1報、マツタケ生長関連酵素に関する論文1報を報告し、トキイロヒラタケの生活環における変動遺伝子探索に関する研究について、学会発表を1件行った。また、本課題研究内容を含む日本きのこ学会奨励賞受賞講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究成果として、トキイロヒラタケの形質転換が容易に行える状態になった。まず、生活環を通して発現量が高いGPD遺伝子の、プロモーターからターミネーター部までクローニングした。このトキイロヒラタケ由来GPDプロモーターは大腸菌由来ハイグロマイシン耐性遺伝子であるhphの発現を可能にし、トキイロヒラタケ形質転換体の選抜に有効に使用できることが明らかとなった。さらに、本課題のテーマの一つである色素タンパク遺伝子(PsPCP)の過剰発現(センス鎖挿入)および抑制発現(アンチセンス鎖挿入)に使用できる可能性が見いだされた(アンチセンスRNA法)。これにより、延期配列が分かればある程度の正確性を持って、ターゲット遺伝子を抑制できることが可能になった。現段階で、実際にピンク色の子実体を形成するトキイロヒラタケのPsPCPをアンチセンスRNA法により抑制させた形質転換株を取得して栽培したところ、白色の子実体原基を形成した。これは本研究課題のうち1つのテーマを達成したことになる。 本研究課題では、マツタケにおいて上記に示したトキイロヒラタケのような形質転換方法の開発を第一の目的としている。ホスト株として用いるためにマツタケ単核体の取得を目的に、細かく切り刻んだマツタケ菌糸体を大量の個体培地で生育させ、新鮮な菌糸をYatalase(タカラバイオ)処理することにより、従来の数百倍量のプロトプラストを取得し、その再生率の低さをカバーした上で単核菌糸体を得ることを試みた。しかしながら、現在までに単核体の再生は確認されていない。再生株は、いずれも二核体であり、プロトプラスト未消化菌糸がプロトプラストの精製段階で混入していることが考えられる。 このように、マツタケの形質転換用のホスト株取得、並びに、プロトプラスト調製法の確立ができていないため、現段階の実験進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目には、第一にマツタケ菌糸の新鮮な再生が期待されるプロトプラスト作成法を確立することを目標にする。初年度では、マツタケプロトプラスト形成のため、様々な細胞壁溶解酵素(Lysing enzyme、celllase onozuka RSおよび10、Yatalase、chitinase)を試したが形質転換を期待できるほどのプロトプラスト数(1千万個/ml)を獲得できなかった。その再生率の低さをカバーするような、再生培地の検討やプロトプラストの精製法を検討中である。 現在、供試菌株にはマツタケNBRC30605株を用いている。本菌株はほかのマツタケ菌株と比較して生育速度が速いため扱いやすい。今後はこの特徴をさらに生かし、さらにプロトプラストを形成しやすい(細胞壁が薄いなど)突然変異株の取得も試みる。突然変異の誘発法として、X線照射とUV照射を現段階では予定している。 トキイロヒラタケにおいては形質転換法を確立したため、さらなる遺伝子機能解析を発展させる。初年度はPsPCP遺伝子の抑制を行った。2年目にはプロテアーゼ群の破壊株において、子実体の形成が抑制されるものや、対照的に子実体が増産されるものが育種されるか確認する。また、アンチセンスRNA法では、オフターゲット株作出の懸念が残るため、確実にターゲット遺伝子の破壊を行うためのKU80遺伝子破壊株の取得を目指す。近年、Neurospora crassaにおいて、Ku70やKu80などのNHEJに関わる遺伝子を破壊することにより、遺伝子ターゲッティングの著しい効率化が可能となった。同様の手法を用いることによKu80遺伝子破壊株の作出をして同様の手法を用いる。
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Research Products
(4 results)