2021 Fiscal Year Annual Research Report
酸素・水素同位体年輪気候学のための、重水パルスラベリングによる樹木生理学的研究
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19K06179
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
香川 聡 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40353635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内海 泰弘 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50346839)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 葉面水分吸収 / Foliar water uptake / 酸素 / 水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、重水ラベリング実験を行ったスギ苗木6個体のうち、分析を行っていない4個体の同位体分析結果について解析したが、樹体内の水の重水濃度・バイオマス中の酸素-18・重水素濃度ともに最初に分析した2個体と同様の傾向を示し、主要な結論は変わらなかった。重水パルスラベリングを行ったスギ苗木合計6個体の同位体分析結果をまとめ、英文の論文を執筆・投稿し、Tree Physiology誌に受理された。本論文はオープンアクセス論文として5月中にオンライン公開される予定である。本研究の最終的な結論は以下のとおりである。重水暴露後24時間以内に、葉内の水の約4割が葉面から吸収された重水に置き換わり、その一部は根まで逆流することが分かった。降雨時のように葉が濡れる条件下で形成された葉のセルロースの場合、酸素・水素の約3分の2が葉面吸収水起源(69%が葉面吸収水起源、31%が根吸収水起源)であった。一方、根のセルロースの酸素・水素の大部分は根吸収水起源であった(20%が葉面吸収水起源、80%が根吸収起源)。枝の木部のセルロースの場合は約半分が葉面吸収水、残りの半分が根吸収水起源であった(55%が葉面吸収水起源、45%が根吸収水起源)。本研究により、木材の酸素・水素のうち何割が葉面から吸収された水由来、何割が根から吸収された水由来であるかが初めて定量的に示された。以上の成果から、年輪の酸素同位体比を用いた産地判別が、梅雨期のある東アジア地域で特に成功しやすいことが推定された。
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Remarks |
日本森林学会、日本生態学会での招待講演および日本木材学会での一般公演の動画です。
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