2020 Fiscal Year Research-status Report
渦鞭毛藻ウイルス感染過程の徹底精査:吸着-侵入-複製-形態形成から放出過程まで
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19K06186
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
高野 義人 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任研究員 (10435852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長崎 慶三 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (00222175)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ウイルスゲノム解析 / シングルセルトランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
HcDNAVのゲノムの全長解読を目指し、以前に得られていたイルミナ社Miseqによるデータからの24本の断片コンティグを繋ぐために、Milipore社のMinIONを用いてロングリードデータの取得を行った。抽出DNAおよび、REPLI-g WTA Single cell Kit(Qiagen)を用いてDNA増幅を行った試料からMinIONによるシークエンスデータを取得した。これらを基に、ロングリード配列とショートリード配列を用いた最適な解析方法の検討を行い、ゲノム配列データを得た。しかし、完全長のHcDNAV配列を得ることは出来なかったため、Miseqデータにより得られた24本の断片コンティグの間をロングリードデータを用いて目視で繋ぐことで、ほぼ全長の仮配列を得られた。コンティグ間に用いた配列はエラーが多いので、配列の読み直しが必要である。 シングルセルトランスクリプトーム解析の作業を進めた。ウイルスを感染させた宿主細胞をHoechst 33342 を用いて生細胞内のDNAを染色し、蛍光顕微鏡観察を行い、細胞内におけるウイルスDNA領域の形状とサイズを基にウイルス感染後の経過時間ごとに1細胞ずつ複数細胞の処理を行った。全ての細胞において、蛍光顕微鏡観察像を記録し、その細胞よりSMART-Seq HT Kitを用いてcDNAを調整した。しかし、予想していた以上にDNAのコンタミが見られ、本研究ではイントロンによるmRNA由来かDNA由来かを判断できないためDNAコンタミに対処する必要が生じた。そこで、いくつかのDNase酵素を検討することにより、従来のシングルセルトランスクリプトーム解析では行われていない手法の確立に成功し、DNAのコンタミに対処することができた。現在、ウイルス感染の段階ごとに合計60細胞分の試料作製が完了しており、これからシークエンス解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウイルス粒子を大量に集めることが難しく、充分な配列データを得るためのDNA濃度が得られなかった。また、DNA増幅を行った試料からも充分な配列データを得ることが出来なかった。そのため、解析に多くの時間と労力が必要となってしまった。しかし、様々な工夫と独自の解析によって、既存の手法だけでは得られない解析段階まで達していると言える。 シングルセルトランスクリプトーム解析においても、本研究では用いる全ての細胞の状態を明示する鮮明な記録を残しており、繊細かつ多くの時間が必要となる、これまでの研究に類を見ない手法である。また、予想していた以上にDNAのコンタミが確認されたため、その対処方法の検討に多くの時間が必要となってしまった。しかし、シングルセルでの解析においてDNase処理を導入することに成功したことは、今後の1細胞解析分野においても大きな一歩であると言える。全体的に予想以上に時間と労力がかかってしまったが、予定している解析の一つ一つにおいてトラブルを克服することに成功しており、的確な研究を進めるために必要な時間であった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに準備しているシングルセルトランスクリプトーム解析用の試料を基にシークエンス解析を行う。得られたデータから、ウイルス感染からのウイルス遺伝子発現の経時的変化を解明する。それらの解析結果を基に、追加の試料作製と解析も検討する。 同時に、これまでに得られたHcDNAV全長仮配列の不確かな領域のシークエンスの読み直しを行う。確実な領域の配列を基にプライマーを作製し、シークエンスをサンガー法により取得し、確かな完全長解読を目指す。クラシカルで時間のかかる手法であるが、確実である。シングルセルトランスクリプトーム解析より得られる配列も用いて、エラーのないより正確な全長配列解読を目指す。 急速凍結置換法によるTEM試料作製を進めており、現時点で期待を持てるサンプル作製を進められている。まずは、準備中のサンプルの観察をおこない、感染の各段階の観察を行うべく、引き続き急速凍結置換法によるTEM試料作製と観察を繰り返す。
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Causes of Carryover |
シングルセルトランスクリプトーム解析において、NGSによるシークエンス解読を予定していたが、試料作製時にいくつかのトラブルが生じたため、前年度内にシークエンス解析にかけられなかった。既にトラブルへの対処に成功しており、試料作製は進んでいるので、シークエンス解析予定である。
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