2019 Fiscal Year Research-status Report
Ecological effects of nighttime artificial lighting on decapod crustaceans
Project/Area Number |
19K06192
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
土井 航 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (70456325)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大富 潤 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 教授 (10253915)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オカガニ / 地表活動 / 幼生放出 / 降海移動 / 光害 |
Outline of Annual Research Achievements |
夜間の人工光が野生動植物に様々な影響を及ぼしており、夜行性の半陸性甲殻類であるオカガニ類には、人工光の設置によって個体群維持に重要な繁殖行動に変化が起きている可能性が示唆されている。 2019年度に新たに実施した調査として、7月、8月、9月の満月期に、沖縄県石垣島の海岸およびオカガニ類の巣穴分布域において、夜間の人工照明の影響とオカガニ類の行動とその日周性を観察、記録した。調査場所は、石垣島市の白保、大浜、真栄里、新川、崎枝、川平で、自然度が高い場所のほか、公園や空港、ホテルの近くなどの人工照明の影響下にある場所を選出した。これらの場所において、夜間の半陸生甲殻類の行動を目視により観察するとともに、自動撮影カメラによるタイムラプス撮影を行った。暫定的な解析結果ではあるが、地表活動の日周性は、オカガニの種類と巣穴のある場所の植生により大きく異なることがわかった。調査時期である7月から9月の満月期は半陸生甲殻類の幼生放出期に相当するため、海岸では半陸生甲殻類の放幼性行動が観察された。その種類はオカガニとミナミオカガニ、ツノメガニ、ムラサキオカヤドカリ、オカヤドカリ、オオナキオカヤドカリ、ナキオカヤドカリであった。幼生放出のために降海する種・個体数は海岸ごとに大きく異なった。これらの調査結果の解析と考察は現在も継続中であるが、今年度の野外調査では光害のみならず、周辺環境の自然度をはじめそのほかの要因も甲殻類の行動時間には重要と考えられた。 研究発表については、2019年度以前に行われた人工照明の存在しない自然海岸におけるオカガニ類の繁殖生態に関連するデータをまとめ、雑誌論文に投稿したところ、受理・公表された。また、人工照明の存在しない自然環境下における巣穴密生地域でのミナミオカガニの地表活動の観察結果をまとめ、学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は予定していた内容の野外調査を実施することができたものの、次のような課題が残された。オカガニ類の巣穴周辺での行動観察において、人工照明の影響がある場所では巣穴の密度が低いため、限られた数の観測データしか得られなかった。そのため、2020年度には人工照明を人為的に設置した野外実験のみを実施する計画であったが、野外での夜間の人工光の観測とカニの行動観察を継続して実施する必要がある。2019年度の調査の解析結果とCOVID-19の感染拡大による沖縄県からの来県自粛要請の状況をふまえて今後の方策を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
石垣島で明らかにした人工照明の照度を、西表島のオカガニ類の巣穴密生地域と砂浜海岸で再現し、その地表活動の日周性および幼生放出の時刻への影響をみる野外実験を行う予定である。カニの活動期は温暖な季節に限られるため、今夏、沖縄県からの来県自粛要請等が長期化する場合には、鹿児島県本土において、スナガニ類を対象に実験を行うことも検討している。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた自動撮影カメラよりも安価な機種で代用可能であることが判明したため。また、予定していた現地調査が都合により当初の予定よりも1回少なくなったため。2020年度は別のカメラを購入する費用として、調査のための旅費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)