2020 Fiscal Year Research-status Report
藻類のD-アスパラギン酸の生理的役割および合成経路の解明
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19K06193
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
横山 雄彦 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (60296431)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒジキ / D-アスパラギン酸 / 珪藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物に含まれるアミノ酸は一般にL型である。ところが海藻や微細藻類にはL-アスパラギン酸(L-Asp)のみならず,その鏡像異性体である遊離D-アスパラギン酸(D-Asp)を多量に蓄積している稀な種が存在する。D-Aspは全ての藻類に存在しているわけではなく,ヒジキなどホンダワラ属の一部の海藻および珪藻Asterionellopsis glacialisに限って,多量に蓄積されていることを申請者らは明らかにしている。本来なら真核生物が利用できないはずのD-Aspを,なぜこれらの藻類のみが蓄積しているのか謎であり,その代謝も未解明である。本研究では,藻類におけるD-Aspの役割および合成経路の解明を目的としている。 『藻類におけるD-アスパラギン酸の役割の解明』 申請者らはヒジキを用いた予備的実験において,様々な条件下におけるD-Aspの変動を調べ,D-AspはL-Aspと共に低酸素下で著しく減少し,酸素が十分に存在する状態に戻すとL-Aspが先に,次いでD-Aspが回復することを認めている。以上の結果をふまえ,藻類では『遊離D-Aspは低酸素下でのエネルギー源として利用される』と推測している。ヒジキで得ている知見をもとに,微細藻類のうち唯一D-Aspが多量に認められている珪藻Asterionellopsis glacialisを用いて低酸素下におけるD-Aspの変動を調べたところ,やはり時間の経過とともに24hまでD-Aspは減少した。なお,D-Aspと同様にL-Aspも減少し,そのD-Asp含量はL-Asp含量と同程度であった。 動物ではD-Aspを多量に持っているアカガイで,低酸素とD-Aspの関係が報告されているが,微細藻を含む藻類のD-Aspも低酸素と関係があることを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は珪藻Asterionellopsis glacialisの遊離D-Aspの生理的役割の解明のうち,低酸素との関係を調べる予定であったが,予想した結果が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
藻類のD-Aspはヒジキを含むホンダワラ属の種に限って存在していることが示唆されている。微細藻類では珪藻Asterionellopsis glacialisで唯一多量にD-Aspが認められているが,その近縁種にD-Aspを多量に含む種が存在しないのか分布を調べ,進化とD-Aspの分布について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍でサンプリング出張が制限されたため。次年度もコロナ禍でサンプリング出張が制限される場合は消耗品を購入する。
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Research Products
(1 results)