2020 Fiscal Year Research-status Report
Diversity of foraging behavior of coral reef fishes: relevance to coral reef ecosystem soundness
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19K06199
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
名波 敦 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(長崎), 主任研究員 (90372060)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブダイ類 / チョウチョウウオ類 / 摂餌基質 / 摂餌回数 / 藻食魚類 / サンゴ幼生 / サンゴ成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
サンゴ群集の生育が健全な海域と劣化した海域の2海域で調査地点を複数選び、ブダイ科魚類ハゲブダイの5分間あたりの摂餌回数と摂餌に関する探索時間(ある場所で摂餌した後,別の場所へ移動して摂餌する間にかかった時間)のデータを収集した。その結果、摂餌回数は両海域で顕著な差はみられなかった。一方で、探索時間はサンゴの劣化した海域で短い傾向がみられた。サンプリングによって得た個体の肝臓の組織切片を調べた結果、サンゴが劣化した海域で脂肪の蓄積が高く、栄養状態が高い傾向がみられた。なお、サンプリングの際に消化管が傷ついた個体があったため、ブダイ科魚類の胃内容物重量の正確な測定は厳しいことが判明したため、十分なデータ収集ができなかった。同様のデータについて、ニザダイ科(サザナミハギ、ミヤコテングハギ)およびアイゴ科(ヒッフキアイゴ)でも収集し、解析に着手した。
藻食魚類とサンゴ幼生の生存率の影響を検証するため,人工の基盤にサンゴ幼生を着生させた結果、海藻繁茂が幼生着生率を下げる傾向がみられた。また、枝状ミドリイシ属のサンゴ片を接着させた人工基盤を用いて、ケージ群(ケージで藻食魚類を排除した実験群群)、半ケージ群(ケージの構造はあるが、魚類の進入が可能)、コントロール群(操作なし)の3群を設定し、サンゴの生存率および成長率を計測した。その結果、生存率および6ヶ月後の成長率は、ケージ群で他の2群より低い傾向がみられた。
チョウチョウウオ科魚類の摂餌行動のデータを取りまとめた結果、サンゴのポリプを専門に摂餌する7種について、サンゴのタイプとの好みの度合いが判明した。この成果を学術雑誌で公表した上、成果をマスコミに周知し、新聞紙上およびネットニュースで成果が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に対象としていたブダイ類を対象として、摂餌行動の詳細なデータ(摂餌回数と摂餌に関する探索時間)を収集でき、サンゴ群集の生育が健全な海域と劣化した海域の2海域で比較するkとおができた。また、2021年度に対象予定としていたニザダイ類とアイゴ類についてもデータ収集に着手できた。これらの知見は、我が国のサンゴ礁ではこれまで得られておらず、サンゴ群集と魚類の行動の関係を解明することに寄与しており、本課題の目的に合致している。チョウチョウウオ類の摂餌生態に関する成果が国際誌に公表され、成果はマスコミでも報道された。このことは、サンゴ群集の多様性とチョウチョウウオ類の摂餌基質の関係を広く知ってもらう機会になり、サンゴ礁の生物多様性について一般市民に理解してもらうことにつながったと考えられる。一方で、ブダイ類の胃内容物重要のデータは十分に収集できなかった。
野外実験においては、2019年度の予備実験をふまえ、2020年度から本格的な実験に着手できた。サンゴ幼生の着生実験から、藻類の繁茂と幼生着生率の関係が把握できた。また、枝状ミドリイシを用いた野外実験にも着手し、藻食魚類の存在と藻類の繁茂の関係を明らかにしつつ、それと絡めたサンゴの成長率および生存率のデータを収集できた。
以上を踏まえ、成果の発表と普及では大きな進捗がみられた一方で、ブダイ類のデータ収集がやや遅れていることから、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、藻食魚類のニザダイ科とアイゴ科を対象にする。予定では、ニザダイ科としてサザナミハギとナガニザ、アイゴ科としてヒフキアイゴとヒメアイゴを研究対象とする(野外の生育状況などにより変更の可能性もあり)。サンゴ群集の生育が健全な海域と劣化した海域の2海域で、摂餌回数、探索時間、摂餌基質を比較する。行動の記録には小型のカメラを使い、動画撮影ののち、研究室で解析を行う。2科の魚類を2海域で採集し、胃重量の重量および肝臓の脂肪蓄積組などの生理・生態学的な特徴を2海域間で比較する。
サンゴの生存率や成長率と藻類繁茂の関係について年比較を行うため、2020年度に引き続き、枝状ミドリイシ属のサンゴ片を付着させた人工基盤を用いて、野外実験(藻食魚類を排除した実験群と排除しない実験群を設定)に行なう。ケージ群(ケージで藻食魚類を排除した実験群群)、半ケージ群(ケージの構造はあるが、魚類の進入が可能)、ケージなし群(コントロール)の3群を設定し、プレート上のサンゴの生存率と成長率、および海藻の繁茂の状況のデータを収集する。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していたに野外調査のうち、悪天候などで調査に行けない日があり、ブダイ科魚類のうち1種(ハゲブダイ)については十分なデータが収集できたが、他の種については十分なデータが収集できなかった。また、サンゴを用いたプレート実験については、台風で実験用のプレートの一部が破損したため、当初想定したデータのうち、いくつかは収集不可能になり、調査の回数が減った。
以上を踏まえて、2021年度では、従来予定していたニザダイ科魚類とアイゴ科魚類の摂餌行動のデータ収集を行う。また可能であれば、2020年度に十分なデータが収集できなかったブダイ科魚類についてもデータ収集を試みる。2019年度および2020年度では、1科ずつのデータ収集をしたが、2021年度は2科にわたるため、調査日程が過去2年間より増えると予想される。その結果、請求した助成金をすべて使用すると考えられる。
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