2020 Fiscal Year Research-status Report
カレニア・ミキモトイ殺藻ウイルスと宿主の間にある共存と対立の動的平衡の検証
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19K06219
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
中山 奈津子 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(廿日市), 主任研究員 (20612675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜口 昌巳 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(廿日市), 主幹研究員 (60371960)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カレニア・ミキモトイ / KmV / RNAウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
有害藻類カレニア・ミキモトイ(Karenia mikimotoi)による赤潮は,規模や分布域を拡大し,日本の水産業に深刻な被害を与えている。申請者は,数年前,カレニアを特異的に殺滅するウイルス(KmV)を,赤潮衰退期の海水から分離・培養することに成功した。これは,カレニア赤潮の衰退にウイルスが関わっている可能性を示すものであった。ウイルスは,標的生物のみを殺滅し,爆発的に増えるので,大増殖する赤潮生物を連鎖的に死滅させることが可能であり,赤潮防除技術への利用が大いに期待される。これまでの研究より,KmVは少なくとも2種類の感染型に分けられ,それらは,宿主への感染時間が異なることが明らかになった。さらに,KmVが赤潮の衰退期から分離されたことより,カレニア赤潮の衰退,すなわち,赤潮形成期間に影響を与えている可能性が見出された。しかしながら,ウイルスの関わるカレニアの死が,感染死によるものか,ウイルス感染による個体群全体の死を回避・軽減するための自身の細胞死によるものか,ウイルス感染とカレニアの死との関係は明らかになっていない。本課題では,高感度定量PCRの構築や,発現解析やアポトーシス解析等によるウイルス感染時のカレニアの応答を明らかにすること,これらの結果をもとに,環境動態と相互作用等生理生態学的な知見を統合し,赤潮衰退期におけるウイルスの影響を明らかにすることを目的としている。今年度は,昨年度に引き続き,新規ウイルスの同定やウイルス粒子回収法の検討,相互作用に関する試験系の構築等を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は,昨年までに引き続き,新規KmVの分子解析に向けた回収法および核酸抽出法を検討した。本ウイルスの核酸回収は,RNase分解酵素などが回収の阻害をするため,極めて困難であった。本年度は、粒子回収効率を上げる方法,核酸抽出効率を上げる方法,分解酵素を阻害する方法を検討した。核酸抽出に関しては、マニュアル抽出法に加え、市販の抽出キットも検討した。いくつかのキットはコロナの影響で納品が遅れており、入手次第検討する予定である。したがって、定量PCRの構築が止まっていることから,遺伝子によらない方法である,ウイルス感染時にカレニア生体内で起こるであろう核の形態変化をモニタリングし,画像解析技術の確立を進めている。また、現場で起こりうる事象の一つに,UV照射がウイルス感染に及ぼす影響について知見を深める必要があった。これは,ウイルスの中には,UV照射や抗生物質処理により細胞崩壊が誘発されるものがあるため,昼間プランクトンが表層に集積し,UV照射によってウイルス感染が誘発され,赤潮の終息に関与すると考えたからである。昨年度までに, UV領域の光照射によってウイルス感染が促進されることが推察されされたことから,再現実験を行っているところである。さらに、KmV感染時のカレニアの応答に関する情報を蓄積するために、発現解析やアポトーシス解析に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
核酸の回収がほぼ可能になり,抽出キットおよび実験試薬が入手できれば、定量PCRの構築を再開できる。また,KmV感染時のカレニアの応答に関する情報を蓄積するために、発現解析やアポトーシス解析を進める予定である。UV照射がウイルス感染に与える影響についても,引き続き知見を収集する予定である。これらの結果を統合し、カレニア赤潮衰退期におけるウイルスの影響に関する知見を蓄積する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスパンデミックの影響により、本実験い必須であるRNA抽出キットの年度内の入手が困難になった。そのため、2021年度に注文することとなった。
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Research Products
(1 results)