2020 Fiscal Year Research-status Report
夏眠から探るイカナゴの激減要因:温暖化にイカナゴは対応できるのか?
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19K06226
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
阿見彌 典子 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (20588503)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 夏眠 / イカナゴ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)レプチンの測定系には変性ガゼインベースのBlocking溶液が適していることが分かった.それらを用いて,作製したイカナゴレプチン抗体およびビオチン結合レプチンにて0.005~5 μg/mlまでの標準曲線を描くことができた.現在は,新しく入手できたイカナゴの血液,筋肉などからのレプチンを含む脂肪抽出方法を検討している.
(2)瀬戸内海個体群を12℃一定でイカナゴを飼育すると夏眠は行わない.そこで,再度12℃一定で飼育し夏眠を行わない瀬戸内海個体群を作出し,自然水温条件下での飼育により夏眠した個体と,下垂体内の生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)と血中テストステロン量を比較した.その結果,下垂体内GnRH量は自然条件下で飼育し夏眠した個体群(対照群)より常に高い値を示した.血中テストステロン量も対照群におけるテストステロン量よりも常に高く,最大で10-15倍も高かった.ただし,成熟期では,12℃一定群と対照群の血中テストステロン量はほぼ同じ値となった. 夏眠した個体群では下垂体内GnRH量,血中テストステロン量および生殖腺重量比が成熟期にかけて同調して増加するのに対し,夏眠しなかった12℃一定飼育群ではGnRHとテストステロン量の増加する時期が一致しないことは,視床下部-脳下垂体-生殖腺以外の系によりテストステロンの分泌が制御されている可能性を示唆している.さらに,夏眠していない個体でこれらのホルモン量が高くなっていたことから,成熟に関与する代表的なホルモンであるGnRHおよびテストステロンが夏眠の開始や終了にも関与する可能性が見いだされた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
緊急事態宣言による移動制限により,飼育実験開始時期が遅れたものの,予定通りには進めることができている.
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Strategy for Future Research Activity |
実験予定課題に関しては,仮説通りの結果を得ている.したがって従来の方針通りに研究を遂行する.また,予想していた結果に加えて,新たに見いだされた夏眠開始前から開始時における行動の指標,GnRHやテストステロンの作用などを採集年度の研究に活かし,より詳細にホルモンの変動結果と合わせて解析する.また,資源回復への貢献に加えて掲げている,夏眠・冬眠・休眠の進化的背景の理解には瀬戸内海に生息する個体と,他の海域に生息する個体との行動および内分泌的な比較が重要となる.2021年度は瀬戸内海個体群に加えて三陸沖の個体群の入手に関しても対応中であり,より詳細に地域差を検討し,引き続きイカナゴの夏眠,成熟およびその内分泌機構の解明に取り組む.
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Causes of Carryover |
各地域のイカナゴ輸送が翌年度に持ち越されたこともあり,旅費,飼育実験費が繰り越される形となった.
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