2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06232
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長 由扶子 東北大学, 農学研究科, 助教 (60323086)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日出間 志寿 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (30241558)
小池 一彦 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (30265722)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 生合成 / 免疫染色 / サキシトキシン / LC/MS / 安定同位体標識 / 渦鞭毛藻 / 免疫電顕 / 3'非翻訳領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
【1.阻害剤添加実験による輸送体関与の推定】有毒渦鞭毛藻を2種の代謝阻害剤添加15N-標識硝酸ナトリウム標識培地で培養し、経時的に解析した。一次代謝への作用が予想されたコルヒチン添加系についてはデノボ経路の硝酸から亜硝酸への還元反応抑制と再利用経路の亢進が示唆された。アミノ酸輸送体阻害剤では前駆体アルギニンの再利用経路での生合成が抑制され、前駆体アミノ酸輸送が抑制されたことが示唆された。中間体Int-A'より下流ではデノボ経路、再利用経路両方で抑制されるという異なる作用が観察された。SxtAとRuBisCOのタンパク質発現量比較ではSxtAは低下、RuBisCOは増加しており、アミノ酸輸送だけでなく、制御系への関与も予想された。 【2.STX生合成マシナリーの局在オルガネラの同定】免疫電顕によりSTX生合成の初発の反応を司る酵素SxtAが葉緑体のピレノイドとチラコイドの両方に局在することを明らかにした。In vitro反応のための葉緑体の単離方法を検討した。さらに次のステップの酵素SxtGのペプチド抗体で免疫染色し、細胞内局在を調べたところ細胞表面と内部で異なる形態のシグナルが得られた。抗体の特異性を高めるためアフィニティカラムを作成した。 【3.天然無毒株の無毒化機構の仮説の提唱】天然から得られた有毒種の渦鞭毛藻Alexandrium catenella(Group I)の有毒株と無毒変異株のSxtAタンパク質発現量の培養周期内時期依存性を調べたところ、どの時点でも有毒株より発現量が低い傾向が確認された。sxtA4-mRNAの3'非翻訳領域に変異が生じておりmicroRNAやRNA-binding proteinの結合が妨げられることで、sxtA-mRNAが不安定化し、さらにはSxtAタンパク質の発現量低下を招き、毒生合成が停止しているのではないかという仮説を提唱した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【1.15N硝酸ナトリウム+阻害剤によるSTX関連化合物の動態解明】複数の阻害剤でSTX生合成に摂動をあたえて15N取り込み挙動を統計学的に解析する本手法で一次代謝にデノボ経路と再利用経路という2つのルートが存在するという仮説を支持する結果を得た。2つの経路を区別して解析できるため環境変動に伴う毒生産の制御機構解明について新たな発展が期待される。また当初予定していなかったイオンクロマトーMSの結果からアミノ酸の15N取り込み率と硝酸イオンの取り込み率を比べると硝酸イオンにおける取り込み率が低く、硝酸イオンが細胞内オルガネラに蓄積されたままであることが判明するなど計画にない知見が得られた。これまで培地中の硝酸イオン濃度減少と細胞増殖から予想されていたことを実験データで示すことができた。 【2.STX生合成マシナリーとRuBisCOの免疫染色】15N取り込み挙動の観察から予想してタンパク質発現解析をしたところ、STX生合成酵素SxtAとRuBisCOに逆相関がみられた。両者がどのように逆相関の制御を受けているのかという新たな課題が見えてきた。計画段階には予期しなかった展開であり、本研究で開発した免疫染色法の有効性を示す応用研究として大いに期待できる。 【3.免疫染色と無毒化機構】STX生合成の初発の反応を司る酵素SxtAの局在が葉緑体であることと、天然に生じた無毒変異株の無毒化機構の仮説について論文にまとめ、Harmful AlgaeのはじめてのInvited Feature articleとして掲載された。 当初計画したクローニングやEdU結合タンパク質の解析は行わなかったが、上記のように予期しなかった方向への進展がみられたため、おおむね順調に進行していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
【1.単離オルガネラによる標識アミノ酸輸送活性試験】昨年度の結果をふまえ、細胞内オルガネラへの前駆体アミノ酸の取り込みまたは排出を輸送活性阻害剤が抑制していることを証明することを目的として渦鞭毛藻のオルガネラの各画分を得て、インキュベーション実験に供する。安定同位体標識アミノ酸の標識の挙動を高分解能LC-MSで調べ、前駆体アミノ酸の取り込み能または排出能を確認する。さらに輸送活性阻害剤のオルガネラへの作用の有無について調べる。 【2.in vitro変換実験】渦鞭毛藻の各画分に合成した生合成中間体及び安定同位体標識前駆体を添加して予想される反応が進行するかを高分解能LC-MSで調べる。また差分解析により予想以外の反応生成物について探索し、構造決定する。 【3.sxtA4-mRNA3'非翻訳領域に相同性のあるmiRNAの探索と発現量解析】渦鞭毛藻におけるSTX生合成の制御にmiRNAの関与が予想されるため、有毒種有毒株のmiRNAライブラリーを作成してmiRNASeqに供し、sxtA4-mRNAの3'非翻訳領域の塩基配列に相同性のあるものを探索する。相同性のあるmiRNAについてアミノ酸輸送活性阻害剤のある場合とない場合で発現量の変動があるかどうかをリアルタイムPCRで調べる。 【4.SxtGの細胞内局在】昨年度作成したアフィニティカラムを用いて抗SxtG抗体を精製し、前年度みられた形態の異なるシグナルが非特異的なシグナルではないことを確認する。共焦点レーザー顕微鏡観察で良好なシグナルが得られるのを確認し、オルガネラ特異的蛍光試薬でオルガネラの予想をしたうえでさらに免疫電顕で局在オルガネラを同定する。 【5.阻害剤によるSTX生合成制酵素発現解析】阻害剤添加系でのSxtA、SxtG及びRbcL IIのタンパク質発現を免疫染色によりコントロールと比較する。
|
Research Products
(15 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 合成サキシトキシン誘導体に対する電位依存性ナトリウムチャネルの感受性評価2021
Author(s)
千葉 修, 山田 智士, 角替 俊輔, 島田 紀子, 長 由扶子, 高柳 優夏, 星 美波, 安達 栞菜, 石塚 颯, 長澤 和夫, 山下 まり, 此木 敬一
Organizer
日本農芸化学会2021年度仙台大会
-
-
-
-
-
-
-