2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06245
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
首藤 久人 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40292792)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 現物移転 / インド / 食料消費 / 栄養摂取 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度では,インドの全国標本調査National Sample Surveyをもちいて,同国のアンドラプラデシュ州において2011年に行われた公的分配システムにおける米の配給価格の変更の効果を分析した.この公的分配システムは,現物(食料)移転プログラムの内容をもち,インドにおいてはフード・セキュリティ上の重要な取り組みの一つである.また,州ごとに独自の運営が行われており,中でも南部に位置する同州はこの移転プログラムにおける穀物分配を積極的に行っている州として知られている. 同州では2011年11月に米の配給価格をそれまでより安価なものに改訂しているが,本年度の研究は,この改訂が全国標本調査の調査時期の途中に行われたことを利用した準実験アプローチによって食料消費・カロリー摂取への効果を分析したものである. 実際の効果としては,この配給価格改訂の家計支出における補助額の増加の規模はそれほど大きくはなく,カロリー摂取全体への影響は有意なものが確認されていない.しかしその一方で,それほどカロリーの高くない食料品群や嗜好品への支出シェアが有意に高まるといった効果が確認された. 本研究成果は,2020年度日本農業経済学会大会(新型コロナウイルス感染症への対応により延期・中止)において,個別口頭報告をおこなったものとして同学会によって承認を受けている.現在,研究成果公表のための準備を進めている. またこうした移転プログラムのさまざまな効果に関するレビューを進めている.新型コロナウイルス感染症に対する支援策として現金給付などの対策による移転プログラムが各国で行われていることなども注視しながら,レビュー作業を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度において,現物移転プログラムの効果を推定するにあたって,準実験アプローチを取り入れた分析を行えたことなどから,おおむね順調に研究を進めているといえる. 現物移転プログラムの家計行動に及ぼす影響についてのこれまでの研究のサーベイを現金移転との関連で行うことを予定していたが,これらのプログラムの位置づけが,新型コロナウイルス感染症対策の中で高まっていることから,こうした情報も含めて既存研究の整理を続けている.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は,インドにおける移転プログラムの効果を食料消費や栄養摂取の面から考察したが,地域によってプログラムの内容やその成果には違いが考えられることから,こうした違いを念頭に,準実験アプローチによって移転プログラムの効果を分析する予定である.さらに,食料消費や栄養摂取ばかりではない,より広範な家計行動への影響も分析する. また,各種移転プログラムの既存研究のサーベイを進めて,二年目に取りまとめることを考えている.
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Causes of Carryover |
・年度末に口頭報告を予定していた学会大会が新型コロナウイルス感染症対策の必要から延期となったために当該年度の旅費等の支出が不可能になっている.次年度以降の成果公表などの旅費,英文校閲費に充当することを予定している. ・当初初年度に取り組む予定にしていた研究の,他の実施可能な研究(当該年度の成果)との作業順位を入れ替えたため.次年度以降に対象研究を行う予定であり,必要とされる物品などに使用予定である.
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