2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢者における農産物購買時の情報過負荷の発生状況に関する実証的研究
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19K06262
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
大浦 裕二 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (80355479)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 淳子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 本部, 上級研究員 (00355471)
朴 壽永 県立広島大学, 生物資源科学部, 教授 (10573165)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高齢者 / 情報過負荷 / 食品 / 農産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、視線計測と質問紙調査を組み合わせた研究方法の検討、および高齢者の食品購買時における情報過負荷の発生状況を確認するために、食品を対象にインターネット販売利用時の高齢者の認知的・心理的な負担や混乱(情報過負荷)に着目し、実際のネットスーパーを参考に作成した架空の商品画面を高齢者に見せ、購入する商品を決定するまでの視線軌跡を計測および、購買決定後に商品選択時に感じたことについて質問紙調査を行った。調査には、高齢者が日常的に摂取し、かつ商品数が多く「選択肢過多」による混乱が発生している可能性が考えられる「ヨーグルト」を選定した。先行研究に基づいて、30商品を提示する画面と6商品を提示する画面を作成するとともに、実際のネットスーパーの画面を参考に、どの商品も商品写真、企業名、商品名、内容量、価格を表示するようにした。被験者にはディスプレイ上に30商品か6商品どちらかの画面を提示して、視線軌跡をアイトラッカー(Tobii Pro X3-120)で計測し、商品選択時間や各商品・情報への注視時間を把握した。その結果、選択肢数が多いとき、高齢者は選択を難しいと感じるが、注視する商品の割合を減らすことで購入しないことを含む選択行動を簡略化していると考えられ、ここからは情報過負荷が発生している可能性が示唆された。また、他の年代と比較して高齢者の視線計測の補足率が低い傾向があることが明らかになったことから、計測方法の改善が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、生体情報計測と個別面接調査から農産物を対象とした高齢者の情報過負荷の発生状況を把握することであったが、計画を一部変更し、規格が統一されており商品アイテム数が多いヨーグルトを対象に視線計測とその後の個別面接調査を行った。その結果、高齢者の食品購入時に情報過負荷が発生している可能性が示唆された。ただし、高齢者の農産物購入時においての情報過負荷の発生状況が確認できておらず、また脳活動計測による実験にも着手できていないことから、進捗状況を「(3)やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度遅れている農産物の情報過負荷の発生状況の把握と脳活動計測を優先的に実施する。それらの結果を踏まえて、情報過負荷の種類(類似性、過負荷、曖昧性)に応じて社会実験を行い、高齢者の農産物購買時にどのような場面でどのような情報過負荷が発生するかを、非高齢者との比較を通して検証する。実験は2カ所の農産物直売所で、高齢者計30名、非高齢者計30名を対象に行う。なお、本研究は、新型コロナウイルスの影響を考慮する必要があり、脳活動計測と視線計測については被験者との接触が大きいため、国および自治体の方針を確認しながら細心の注意を払い実験を進める。次年度、実験が難しい場合には、個別面接調査をリモートにより実施することを優先し、脳活動計測と視線計測については、最終年度に行うこととする。
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Causes of Carryover |
初年度は脳活動計測による実験が実施できなかったために、予算を繰越し、脳活動計測の実験費用に充填する。
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