2020 Fiscal Year Research-status Report
ポスト人口転換期における「農的」自然の資源管理問題
Project/Area Number |
19K06277
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤村 美穂 佐賀大学, 農学部, 教授 (60301355)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲岡 司 佐賀大学, 農学部, 名誉教授 (60176386)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 高齢化 / ケア / マイナーサブシステンス |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルスの影響で対外調査および、対面での研究会を計画どおり開催することができなかったため、2020年度は論点整理のための研究会を行った。そこでは、以前の科研費の調査にもとづいた論文執筆(共同研究者は本の編集)をヒントに発想を発展させ、「病気に加えて飢餓や戦いなど、天災、人災を含む健康リスクとそれらを和らげる努力」が、資源を活かすという積極的な方向性を考えるうえでの一つの柱になるという認識を共有した。 一方、一つの地域を超えた生業で、かつ地域の資源の在り方に大きく影響される営みとして養蜂に焦点をあて、北部九州の動向について聞き取り調査を行った。その結果、空間や場所を移動して行う養蜂(セイヨウミツバチの移動養蜂)が減少しており、その背景には、技術的・気候的・経済的要因のほかに、各地の土地利用の変化があることがあきらかになった。また、世代間での経営方法に差が生じていることも明らかになった。このような活動は、養蜂のほかにも、タケノコ販売やシイタケ栽培、薪や炭の生産などもあり、これらの時代的変化についても聞き取りを進めた。 また、有明海の漁村(東与賀町)の生業や労働についての文献おおよび昨年度のデータをもとに、その変化を明らかにする作業を行った。漁村調査の準備もはほぼ完成し、2021年度(海苔漁師が時間のとれる年度前半期)に量的調査を含む本調査を実施する予定である。準備している調査内容は、関連するステークホルダーへの聞き取りとともに、漁師の生業、資源利用、労働時間や労働力の出所、漁村と農村の社会的な関係、他出子の居住地、災害ゴミ(洪水で有明海に流れ出た木材など)への対処などである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者と分担者は、分担者が編集する書籍『生態人類学は挑む 病む・癒す』(2021年出版予定)のアイデアの延長上に本調査を位置付ける作業を行った。すなわち、「病む・癒す」の概念は、ケアの社会的な在り方を考えると、人の心身のみではなく、集団や地域の生活全体(資源の保全や災害への対応も含めて)にもかかわることであることが確認された。このことは、高齢化がすすむ日本の地域社会の、家族のケアと土地や家のケアをともに周囲が担わなければならない状況を考えるうえでは重要なことであることから、枠組みの構成においては成果があったと考えることができる。 一方で、現地調査については、新型コロナウィルスの影響で、対外調査を計画どおり開催することができなかった。とくに高齢者が多い地方部では高齢者が多いことや、都市部からの訪問を躊躇される地区も多かった。したがって、調査計画を練ることに時間を費やした。 当初の予定では2年目、3年目に本調査を進める予定であったが、それが3年目の2021年度から22年度前半に延期されている状態である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究会については、オンライン体制が整ったので、オンライン研究会として、活発に行いたい。 現地調査については、計画された漁村での量的な調査は2021年の前半期に、その他は後期に実施する予定である。昨年度に予定していた調査ができなかったことから、調査自体において、定量的な調査の割合を増やしたいと考えている。 また、それと並行して、高齢者の生活のケア、心身のケア、養蜂などの、マイナーサブシステンス的な自然とのかかわりの洗い出しなどは、通年にわたって続けていく。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、研究会および現地調査の実施ができなかった。特に過疎地域の調査では高齢者が多く、都市部からの訪問が躊躇された。また、学会や研究会がオンラインで行われたため、旅費の使用が大幅に少なかった。 これらについては、代表者は主に、2021年度に現地調査のために使う予定である。具体的には調査旅費および調査補助謝金、調査にかかわる消耗品などの購入にあてたい。分担者は、成果やアイディアの発表のための準備にも充てる予定である。
|