2021 Fiscal Year Research-status Report
ポスト人口転換期における「農的」自然の資源管理問題
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19K06277
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤村 美穂 佐賀大学, 農学部, 教授 (60301355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲岡 司 佐賀大学, 農学部, 名誉教授 (60176386)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 農的自然 / 高齢化 / 担い手 / ケア / リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、現地調査としては、有明海の沿岸部(昨年度までの東余暇地区に加えて、佐賀市南川副・大詫間地区、諸富地区、福岡県大川市)で、キーインフォーマントとなる漁業者および漁村居住者にインタビューを行い、とくに沿岸部の農漁村の資源利用の歴史的変化や直面する諸問題について聞き取りを行った。また、養蜂などのマイナーサブシステンスについての情報収集を行った。ただし、九州地区で新型コロナウィルスの状況が良くなかったため、調査は個々人への聞き取りの限定されたものであった。 二次データの整理については、整理・分析されていない漁業センサスの地域ごとデータの整理にとりかかり、地域ごとの特性についての把握を行った。また、資源利用が大きく変化する時期の、世帯ごと、地域ごとの生業戦略と、その後の資源利用の傾向を把握するために、それらのデータと農林業センサス関連のデータを結びつける作業を開始した。併行して、航空写真を用いて陸上部の変化(土地利用や佐賀平野の水システム)の分析も開始している。 以上の結果、現在の状況として、以前から指摘されていた山村部の過疎高齢化や林業の担い手不足に加えて、内水面漁業、さらには沿岸部の養殖を含めた漁業の担い手も減少していること、またノリ養殖やエツ漁など、海の資源利用の変化が陸上部の水利用(農業用水や洪水対策など)と大きく関連していることもわかった。 成果としては、昨年度までの段階で分析の視点として議論した「ケア」「リスク」などに関する論考を学会報告したほか、分担者が編集する書籍『生態人類学は挑む 病む・癒す』に著し、12月に出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度にくらべて聞き取り調査や二次データの分析を行うことができた。その一方で、2021年度も引き続き新型コロナ感染症の影響で、組織的な調査をすることができず、前年度からの遅れを回復することができなかった。21年度は、まとまった数の世帯を対象都市、構造的面接法によって、対面で農的自然(森林や田畑、干潟や河川など)への具体的なかかわりを聞き取る予定であったが、この調査の部分を2022年度に行うことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
構造的面接をすすめるが、その内容として、①農林業はもとより、マイナーサブシステンスや漁業においても、対象となる環境(漁業であれば海や干潟や川)に行ってきた様々な働きかけ(砂をまくなどの手入れ)の実態についての歴史的経緯、②生業や田畑・海などの利用についての世帯の生計戦略(とくに家族の年齢構成や担い手)と時代背景、③水をとおした相互の関係、などを考えている。また、調査の視点にかかわる研究会として、21年度は人類学的な視点をとりいれた考察をすすめたが、21年度中に行った他の研究課題での議論とも結びつけながら、農村研究とそれらをどう結び付けるかを検討していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、研究会がすべてオンラインで開催されることになったこと、現地調査の嘉数が減ったことにより、令和2年度の旅費およびそれに関する人件費が予定どおりに執行されなかったため。
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