2023 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト人口転換期における「農的」自然の資源管理問題
Project/Area Number |
19K06277
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤村 美穂 佐賀大学, 農学部, 教授 (60301355)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲岡 司 佐賀大学, 農学部, 名誉教授 (60176386)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 人口減少 / 資源管理 / ケア / マイナー・サブシステンス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の藤村は、佐賀県の有明海の干潟における海苔養殖および、中山間地も含めた生業とはいえないような自然資源の利用について調査を進めた。2022年度までに主に行った干潟についての調査においては、人口が急激に増加しつつあった戦後から高度経済成長期までの漁村の資源利用が、その後の社会経済環境および、干潟の生態学的環境の変化にともなって、どのように変化したかについて検討し、現在では、海苔養殖の継続そのものが危機に瀕している実態を明らかにした。また、それぞれの時期における漁師たちの判断の基準についても分析を行った。 中山間地などを中心とする自然資源の利用については、マイナーサブシステンスとしての狩猟における、人と動物との関わりをとおして、自然と駆け引きすることの意味(個々人の生活やコミュニティにとっての意味)について考察をおこなった。他に、統計的な調査によって、中山間地の農地で清算された米や野菜の贈答についての把握を試み、農地の利用に結び付く動機について検討した。 ポスト人口転換期の社会は、人口減少社会でもある。本研究では、これとは逆に人口増加に伴う資源利用や管理の問題に直面するスリランカの事例も調査をおこない、その共通する部分や異なる部分について検討した。また、人口減少期の社会においては自然資源の利用の量も範囲も、その流れも、それまでとは異なることは違いない。それ故、このような社会において、維持が必要な二次的自然(農的自然)を維持する動機として、生産に加えて、どのような自然とのかかわりが現在、続けられてきているのかについて把握しておくことは重要である。これらについて検討するため、代表者と分担者は、上述の調査に加えて、「病む・癒す」を共通テーマにした本の編集にかかわり、病む・癒すという視点から、さまざまな自然とのかかわりを分析する可能性を検討した。
|