2023 Fiscal Year Annual Research Report
日本型総合農協の制度的特質に関する研究―協同組合性と農業団体性の相克の視点から
Project/Area Number |
19K06281
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
増田 佳昭 立命館大学, 総合科学技術研究機構, プロジェクト研究員 (80173756)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細谷 亨 立命館大学, 経済学部, 准教授 (40762068)
辻村 英之 京都大学, 農学研究科, 教授 (50303251)
多木 誠一郎 小樽商科大学, 商学部, 教授 (50324364)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 農会 / 産業組合 / 農業会 / 農家小組合 / 農業団体 / 農業協同組合 / 農業団体再編 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦前における二大農業団体であった農会と農村産業組合は、戦中の農業団体統合によって農業会に一本化された。戦後農協は農業会を直接の前身であるため、農業団体性と協同組合性という二つのの性格を併せもつ。従来農業団体に関する歴史研究や農協の現状分析においてそれを重視する研究はきわめて少なかった。本研究では、両者の性格がどのように戦後農協に引き継がれ、どのように性格づけたのかを、主に制度面に着目して明らかにした。あわせて、各国における農業団体と農業協同組合の実態について分析を行った。 戦前の農会は、帝国農会を頂点に道府県農会、郡農会、市町村農会の整然たるピラミッド型組織を形成し、主に農業指導と農政活動を担い、あわせて農産物販売斡旋事業を行っていた。農村産業組合は、信用事業を中心として農業資材の購買と農産物販売事業を担った。このほかに、蚕糸業組合、茶業組合、畜産組合があり、さらに果樹を中心に同業組合が組織されていた。農業団体法によって、農会、産業組合、蚕糸組合、茶業組合、畜産組合の5団体の統合で農業団体の一本化がなされたが、最大のポイントは、農会の農業指導と農政活動と産業組合の経済事業とが同一の団体に統合された点にある。いわば農会の政治活動や農業指導=産業振興という政治的・行政的活動と、産業組合の信用供与や共同販売、共同購買という経済活動が一体化されたことが、戦後農協の性格に大きな影響を与えた。戦後農協における准組合員問題、営農指導問題はそれを象徴的に表している。 さらに本研究では、農会の指導の下で大正期から昭和初期にかけて集落段階で整備された農家組合、農事実行組合などの農家小組合の歴史と性格について明らかにした。それらは戦後にまで継続し、農政の実行組織と農協の「基礎組織」の両面を持った。農家小組合も農業団体と協同組合の両面を持つのである。
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