2021 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study by local and international level on 'Agro-Medico-Police' and improvement of well-being
Project/Area Number |
19K06282
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
池上 甲一 近畿大学, その他部局等, 名誉教授 (90176082)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アグロ・メディコ・ポリス / 医福農連携 / ウェルビーイング / 農村サステナビリティ / 厚生連病院 / 高齢者福祉 / 小農・家族農業 / 緩和医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施者が、2013年に『農の福祉力-アグロ・メディコ・ポリスの挑戦』で提唱した医福農連携という概念は政策的にも研究的にも広がりをもち始めている。また同時にアグロ・メディコ・ポリスの柱として位置づけた「ウェルビーイング」も広範な注目を集めており、この用語を書名に冠した単行本も多数刊行されるに至っている。こうした社会状況の中で、本研究が目的として設定している、「高齢社会における医福農連携の具体像としてのアグロ・メディコ・ポリス」とそれが「永続可能な地域の形成と住民のウェルビーイングの充実をもたらすための条件解明」はますます重要性を増してきている。 本年度は、長野県厚生連・佐久総合病院を中心に、有機農業、家庭系有機廃棄物のコンポスト化、農村文化などに基づく独自の地域形成を果たしてきた歴史的経緯と、農村のサステナビリティの観点からみた意義について、Can 'Agro-Medico-Polis’ Give New Meanings to Rural Japan?と題する口頭報告を行った("Is Rural Japan Sustainable? Past, Present and Future of Community-based Endeavors"、10月1日~3日、オンライン)。 またアグロ・メディコ・ポリスの重要な条件をなす農村性および小農・家族農業について『有機農業研究』13(2) と『季刊農業と経済』2021年夏号に論文が掲載された。 2021年度も、新型コロナウィルス感染症の影響で、申請時に予定していたアメリカとイギリスの実態調査が実施できなかったが、オランダのケア・ファームの事例についての資料を収集した。 国内調査も、聞き取り対象者として医療や保健所、福祉の関係者が多いために、期待通りには実施できなかった。ただし、比較的身近なフィールドとして設定している兵庫県丹波市においては関連団体との接触を深めることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度も、新型コロナウィルス感染症のために、実態調査を行うことができなかった。何よりも、主たる調査対象が地域医療を担う病院・医院、地域福祉を担う介護施設と保健師、医療関係者を含む小グループなので、コンタクトを取りにくい状況が続いている。ただし、医療・福祉関係者を除く多様なステークホルダーとの接触は、感染者数が高止まり状態にあるとはいえ、ワクチン接種が進んだために少し改善されたので、丹波市における調査を再開したところである。 成果の発表としては、過去の調査で得られたデータを新しい視点で読み直して、ある程度の水準を維持することができた。とくに、医療・福祉・農業という異なった原理に基づく分野をどのように結びつけるのかという点について、マルチ・ステークホルダー主義の考え方を援用するとともに、農村地域の経済的・環境的・社会的サステナビリティ―とSDGsの観点からの接近が有効であることを明らかにすることができた。 これらの成果を海外事例との比較によって、政策的含意に結びつえkタイと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究はフィールド調査が主体であるために、新型コロナウィルスの感染状況といわゆる「ウィズ・コロナ」の体制づくりの進展度合いに、研究の進捗が大きく左右される。当面は本年度と同様に、資料の整理と文献に基づく研究成果の発表を行うことに注力する。 農村地域の高齢者にはオンラインを利用するインタビューが難しいが、関連市民団体等については電子メールやズームによるインタビューを試みる。 当面は、オンラインによる資料収集と書籍・統計による数量的・理論的精緻化に努めることがかだいである。とくに、地域住民のウェルビーイングを把握するために、従来の福祉 理論に地域包括ケアなどの政策的要因と精神的・スピリチュアルな緩和医療の側面も組み込んだ理論化を試みる。可能であれば、医福農連携に関する市民意識の把握のために、オンラインによるアンケート調査を実施する。 すでに緊密な関係のできている兵庫県丹波市でのアクション・リサーチに関しては、兵庫県での感染がピークを過ぎた本年度後半から関係者との現地協議を始めているので、今少し踏み込んだ調査を企画・実施したい。とくに、アグロ・メディコ・ポリスの形成に学校給食や介護施設の給食など公共給食の側面を重点的な対象として組み込む。他地区の国内調査については、情勢の推移を見極めつつ、どこか1地区での調査を実施できるようにしたい。オランダの海外調査については、なんとか次年度中に実施できるように準備を進める。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた国内及び海外の実態調査が、新型コロナウィルス感染症のため実施できなかった。このため、次年度への繰り越し使用を申請し、次年度において初期の研究目的を達成することとした。本年度の国際シンポジウムで報告した内容の英文図書の刊行が予定されているので、その英文校閲料を優先的に確保する。 デンマークでのケア・ファームの実態調査の可能性をできるだけ早い時期に見極めるとともに、もし難しいと判断した場合には、可能な範囲で国内での実態調査を充実させる。
|
Research Products
(9 results)