2019 Fiscal Year Research-status Report
篤農技術採用者の意思決定メカニズムの解明:水中疎植栽培法を対象にして
Project/Area Number |
19K06283
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
安江 紘幸 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 主任研究員 (40508248)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 篤農技術 / 小集団活動 / 技術習得 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、小集団における相互干渉が篤農技術の初期採用者と後期採用者の技術習得を促進するのか、あるいは阻害するのかを明らかにすることである。この目的を達成するため、稲作の篤農家である薄井勝利氏が開発した良食味多収を実現する水中疎植栽培法を篤農技術として捉え、①篤農技術の導入動機と阻害要因、②小集団活動が技術習得に及ぼす影響、③採用時期別における導入行動のパターン解明、として研究課題を限定した。 今年度は、篤農技術の採用時期が異なる農家が参加する小集団において定期的に実施されている研修会に参加し、参加者が研修会参加にあたり期待していることを質問紙調査を用いて評価した。また、研修会による小集団活動が参加者の技術習得にどのような影響を及ぼしているのかについて、年末に収量調査や食味調査を併せた研修会を実験的に行い、篤農技術といった新たな技術体系の導入に際して抱える不安や煩わしさといった抵抗感に関する個人の価値観や志向について評価した。 アンケート結果を見ると、最も評価が高い項目は、「薄井勝利先生の稲作の生長生理に関する知識(4.73)」であり、続いて、「良い米を作りたいから(4.62)」、「さらに高度な技術と知識を持ちたいから(4.62)」、「技術の向上(4.62)」「薄井先生の稲作技術が素晴らしいから(4.57)」、「薄井勝利先生の指導(4.57)」、「良質な米を作りたい(4.57)」となる。これらから、参加者は、稲作技術の向上もさることならがら、薄井勝利氏の指導方法やその個人の技能を評価していることが明らかになった。この評価結果は、篤農技術の研修会参加者が互いの生産した米を食べ比べし自らの栽培暦を発表するなどの研修を通じて技術研鑽を図ることで、篤農技術を導入する際に抱える低収量などの不安や深水等の作業の煩わしさを軽減していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた調査を篤農技術の開発者である薄井勝利氏やその篤農技術の普及定着を目的とした小集団の事務局と連携して実施することができたため
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、篤農技術の開発者である薄井勝利氏やその篤農技術の普及定着を目的とした小集団の事務局と連携し、引き続き、実験的に収量調査会や食味調査会を実施し、把握小集団における相互干渉が篤農技術の初期採用者と後期採用者の技術習得を促進するのか、あるいは阻害するのかを経時的な傾向を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
年度末に実施する予定であった学会報告(日本農業普及学会)の旅費計上分がコロナウイルスのために執行不能となった。R2年度分として、R1年度3月に予定していた日本農業普及学会春季大会での個別報告分の旅費(盛岡~東京)として執行する。
|