2021 Fiscal Year Research-status Report

寒冷地法面の保全に向けた草本植物の根系を含む土層のせん断特性と諸因子の検討

Research Project

Project/Area Number	19K06284
Research Institution	Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine
Principal Investigator	宗岡寿美帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (50301974)
Project Period (FY)	2019-04-01 – 2023-03-31
Keywords	法面保全 / せん断特性 / 強度定数 / 外来草本植物根系 / 緑化工技術 / 施工限界期 / 凍結融解直後
Outline of Annual Research Achievements	この研究では，国土保全・防災の視点から，積雪寒冷地における法面緑化工を想定して作製された草本植物の根系を含む土供試体の一面せん断試験を実施し，法面保全対策としての表層土せん断特性について総合的かつ詳細な考察を加える。令和3年度は，北海道における植生工の仕様植物である3種類の外来草本植物を対象として，施工限界期の前後に播種した場合の根系を含む土供試体のせん断特性について検討した。草本植物の生育開始時期を施工限界期（帯広：9月10日）前後の2020年8月下旬および同年9月下旬とし，2020年10月下旬，2021年3月下旬および7月下旬にわたり3×2パターンの草本植物の茎葉部評価および根系を含む土の一面せん断試験を実施し，強度定数（粘着力ｃ・せん断抵抗角Φ）に及ぼす諸因子の影響について考察を加えた。 2020年10月下旬にせん断試験を実施した結果，草本植物の生育状況，根系の発達状況および根系を含む土供試体の粘着力ｃはKBG＜CRF＜TFの傾向にあった。このとき，草本植物も施工限界期前に播種（積算温度784℃・days）した方が施工限界期後の播種（積算温度335℃・days）よりも草本植物の生育は良好であり，根系を含む土供試体の粘着力ｃは増大していた。とりわけ，施工限界期前播種のTFで粘着力ｃは大きい値を示した。2021年3月下旬に土の一面せん断試験を実施した結果，施工限界期後に播種した3種類の外来草本植物では根系を含む土供試体の粘着力ｃはいずれも小さい値を示し，施工限界期前に播種したTF・CRFにおいて粘着力ｃは相対的に大きな値を示した。このように，春先の高含水比状態において根系を含む土層の引抜き抵抗力を発揮させるには，生育1年目において冬季を迎える前までの間に外来草本植物を十分に生育させておくことの必要性が示唆された。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason 令和元年度・2年度には2種類の草本植物の根系を含む土供試体のせん断特性と植生密度・生育期間に関する経年評価を実施し，令和2年度・3年度にかけては北海道における植生工の仕様植物である3種類の外来草本植物を対象として施工限界期前後に播種した場合の根系を含む土供試体のせん断特性について検討した。今回，新たな視点として，施工限界期前（2020年8月下旬）および施工限界期後（同年9月下旬）に播種し，生育1年目（2020年10月下旬）および翌春（凍結解直後：2021年3月下旬）の2回にわたり根系を含む土供試体の一面せん断試験を実施した。その結果，生育1年目における3種類の外来草本植物の根系を含む土供試体の粘着力ｃはKBG＜CRF＜TFの傾向にあり，施工限界期前に播種することで根系を含む土供試体の粘着力ｃは増大していた。一方，凍結融解直後（高高含水比状態）における根系を含む土供試体のせん断強度（粘着力ｃ）を発揮させるには，施工限界期前の播種が重要であるなどの新たな知見が得られた。しかし，令和3年度に実施を予定していた2種類の実験のうち，もう1つの実験を実施することはできなかった。
Strategy for Future Research Activity	当初の研究計画3年目（令和3年度）に実施予定であった2種類の実験のうち，1つは予定通り実施され研究実績・進捗状況に記載した研究成果が得られた。一方，もう1つの実験として，「生育1年目より根系を含む土の強度定数（粘着力ｃ・せん断抵抗角Φ）が比較的大きい2種類の草本植物（地域制種苗クサヨシ・外来草本植物TF）を選定し，施工適期初期（5月下旬以降）より順次播種した後，同年度中において主に根系全体の形状・生育状況が根系を含む土層の力学的特性に及ぼす影響を詳細に比較検討する。」という実験は実施できなかった。令和4年度には，以上の実験を補完的に実施し，積雪寒冷地の北海道における法面保全に有用な草本植物の根系を含む土層のせん断特性を評価するとともに，諸因子がもたらす法面表層土の保全・補強効果およびその役割を明らかにしていく。
Causes of Carryover	当初の予定と異なり，2020年2月頃より新型コロナウイルス感染防止の視点から学会がオンラインによる遠隔操作に変更されるなど，当初予定していた旅費が使用できなかった。また，令和3年度に予定していた2種類の実験のうち1つの実験を実施できなかった。一方，草本植物の播種作業・土の一面せん断試験・根系処理などに学生謝金を当初予定よりも多く支出した。令和4年度は，残された補完的実験を着実に実施するため，前年度残金（259,900円）を物品費・謝金等として有効に使用する予定である。