2020 Fiscal Year Research-status Report
水土保全や地力向上に資する土壌改良による侵食抑制技術の開発と評価・予測法の確立
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19K06289
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
大澤 和敏 宇都宮大学, 農学部, 教授 (30376941)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 土壌環境保全 / 環境調和型農林水産 / 土壌侵食 / 土壌改良 / 水・物質動態解析モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,土壌硬化剤の散布や沈砂池の堆積土の農地還元による土壌改良に伴う侵食抑制対策効果の定量化と評価・予測方法の確立を目的とする。具体的には,(a)代表的な土壌の受食性の系統的評価,(b)土壌改良による受食性の低減効果の実証試験,(c)解析モデルによる土壌改良による対策効果の評価・予測手法の開発,(d)流域内沈砂池の堆砂量の推定と流域スケールでの対策効果の最大化,という4つの目標を掲げ研究を遂行する。 2020年度は,目標(a)を継続実施した。日本国内の代表的な畑地土壌を用いて,インターリル受食係数,リル受食係数,限界掃流力の実測を行った。また,沖縄県石垣市の試験圃場において,侵食量の野外試験を継続実施した。 目標(b)を継続実施した。畑地土壌と沈砂池堆積土を混和した改良土を供試土として,降雨実験および流水実験を実施して改良土の受食係数を同定し,目標(a)で得られた結果と比較することにより,土壌侵食を効果的に抑制できる改良方法について検討した。それと同時に,土壌の物理性に関する各種試験を行い,改良土の受食係数との関係性について評価した。また,目標(a)で実施した試験圃場において,土壌改良による侵食量の削減効果や作物生育への影響を定量化するための試験を実施した。 目標(c)を進めた。目標(a)および目標(b)で得られた受食係数,透水係数,土性等の情報を土壌侵食解析モデル(WEPP,Water Erosion Prediction Project)の土壌入力データとして整備し,土壌改良による侵食量の軽減効果をWEPPによって解析した。 目標(d)を開始した。石垣島における轟川流域などの主要河川を対象に,流域スケールの水・土砂流出解析モデル(GeoWEPP)を用いた土砂流出解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況としては,概ね計画通りに順調に進展している。目標(a)の代表的な土壌の受食性の系統的評価については,北海道から沖縄の計12種の土壌を用いて受食係数の評価ができたということは,計画通りの成果が上がっている。目標(b)の土壌改良による受食性の低減効果の実証試験については,土壌硬化剤を用いて処理した改良土に加え,沈砂池堆積土を混和した改良土を供試土壌とした室内試験や野外試験を実施できており,計画に沿った形で進展できている。目標(c)の解析モデルによる土壌改良による対策効果の評価・予測手法の開発については,目標(a)と目標(b)の試験結果を用いて土壌改良による侵食量の軽減効果を土壌侵食解析モデルによって解析しており,計画通りの進捗である。目標(d)の流域内沈砂池の堆砂量の推定と流域スケールでの対策効果の最大化については,石垣島における主要5河川を対象流域として,水・土砂流出解析モデルによって解析しており,計画通りの進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度である2021年度は以下の事項について進める。(a):2020年度までに日本国内における12土壌の受食性の評価が完了している。2020年度においては,更に供試土壌を増やし,受食係数の試験値を蓄積するとともに,土壌特性を反映させた形で新たな推定式を提案し,日本各地における土壌の受食係数をデータベースとして整備する。(b):2020年度までに土壌硬化剤によって処理した改良土及び沈砂池堆積土を混和した改良土の侵食抑制効果について検討した。2021年度においては,沈砂池堆積土を畑地土壌に混和した改良土の受食性の変化を室内実験および野外試験によって測定することを継続実施する。(c):2020年度までに,土壌侵食・土砂流出モデルの一つであるWEPP(Water Erosion Prediction Project)を用いた侵食解析を行い,土壌硬化剤によって処理した改良土及び沈砂池堆積土を混和した改良土の侵食抑制効果を解析することができた。2021年度においては,(b)で得られた沈砂池堆積土を畑地土壌に混和した改良土に対して解析を進め,混和条件や土壌の違いによる侵食抑制効果への影響について検討する。(d):2021年度においては,(a)から(c)で得られた土壌改良の土壌侵食抑制効果を実際の流域スケールで検討する。既存のGISデータや現地調査などをもとに,流域内の沈砂池の分布,形状,可能堆砂量などを把握する。そして,WEPPを流域スケールで適用し,流域内の各沈砂池における堆砂量を推定し,沈砂池堆積土を還元すべき農地の選定方法について検討する。
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Causes of Carryover |
(理由) 次年度使用額として316,895円繰り越すことになったが,新型コロナウィルス感染拡大防止に伴い現地調査ができなくなったことや国内外の学会への参加ができなくなったことにより,旅費の支出が当初の計画より少なくなったことによる。 (使用計画) 繰越額の316,895円の使途として,今年度の開催に延期された国際学会の参加のための旅費に充てる。また,現地調査に伴う移動が制限されている状況なので,観測機器の保守・管理などを現地の研究協力者に一部実施してもらい,その謝金に充てる。
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Research Products
(16 results)