2019 Fiscal Year Research-status Report
水田農業が持つ生物文化多様性保全機能の解明ー田んぼの魚とりアンケート全国調査から
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19K06290
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
守山 拓弥 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70640126)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 魚名 / 一次的魚名 / 接頭語 / アンケート |
Outline of Annual Research Achievements |
③魚類多様性が漁撈文化多様性を高めるメカニズムの解明:拠点県調査の結果を用い、②とは逆の順序で、魚名と料理法および漁撈法、料理法と漁撈法、漁撈法と対象魚種の関係を明らかにし、漁撈文化多様性を高めるメカニズムを検討した。 魚名と料理法および漁撈法:申請者らは、魚名を基本部と接頭部に分けると、接頭部に食の適不適(例:マゴイ⇔ニセゴイ)および良否(例:マブナ⇔ニガブナ)の情報が含まれることを明らかにしている(守山・守山2018)。ここでは、接頭部に含まれた食に関する情報を基に、魚名と料理法との関係の論理的考察を行った。接頭部には、接頭辞、接頭語が含まれると共に、接頭部のみで魚名へと変換する独立語の存在が明らかにされた。 一方で、基本部にはフナ、タナゴ等の全国的に共通の魚名が含まれており、これを中央語基本形と定義した。また、基本部にババスコ、ギンギョ等の全国的に共通ではない魚名が含まれており、これらを地方語型基本形と定義した。 さらに、食用として特に重要な種で、成長段階や季節(漁期)により呼称が変化する現象(例:サンザイナマズ→大型のナマズ、アカハラ→瀬付け漁の対象となる繁殖期のウグイ)を踏まえ魚名と漁撈法との関係を考察している。 料理法と漁撈法・漁撈法と対象魚種:料理法と漁撈法および漁撈法と対象魚種の関係を分類化分析の手法であるコレスポンデンス分析により分け、その要因として抽出された成分(変数)を基に多様化の要因を考察した。以上の手順を通じ、魚名から魚種へと順に遡及しながら多様化の要因を明らかにし、漁撈文化多様性を高めるメカニズムの論理的考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の申請書で区分した作業について、①データの集積(全国調査、拠点県調査)、②魚類多様性と漁撈文化多様性の関係の定量解析、③魚類多様性が漁撈文化多様性を高めるメカニズムの解明、④ヒアリング調査による②、③の妥当性の確認のうち、当初予定通り「③魚類多様性が漁撈文化多様性を高めるメカニズムの解明」について解析を進めて、論文執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、④多面組織へのヒアリングにより、②、③で明らかにした点について、全国の多面組織を対象にヒアリング調査を行い、その妥当性を確認予定である。 全国調査としては、これまで栃木県(東日本)において重点的に実施してきた経緯から、西日本(広島県、南西諸島)で実施を予定している。 一方で、現在新型コロナウイルスの問題により、越県しての対面調査(ヒアリング調査)が困難であることから、今後の調査については、状況を踏まえながら適宜検討する予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画において、④多面組織へのヒアリング:②、③で明らかにした点について、全国の多面組織を対象にヒアリング調査を行い、その妥当性を確認する。こととしていたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、出張による調査が実施困難となっており、旅費および調査で使用予定の物品費等の支出が予定より減少したことによる。こうした調査は、新型コロナウイルスの感染が収まった後に実施を予定していることから、R2年度に実施および使用を予定している。
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