2021 Fiscal Year Annual Research Report
地震と豪雨の複合作用に対するため池堤体の安全性評価手法の開発
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19K06293
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
上野 和広 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 助教 (60560167)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地震 / 降雨 / ため池 / 弾性波速度 / ベンダーエレメント |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究計画と目的は,災害外力の複合作用に対するため池堤体の安全性評価手法の開発であった.このため,本年度は原位置で観測可能な弾性波速度を活用したため池堤体の安全性評価手法について検討を行った.ベンダーエレメントを備えた三軸試験機で弾性波速度の計測と液状化強度の評価を行い,両者の相関性を分析した.また,試験条件として,供試体へ作用する初期せん断応力の有無を採用し,弾性波速度と液状化強度の関係に及ぼす初期せん断応力の影響を評価した.これにより,盛土構造物であるため池堤体の安全性評価手法の開発を試みた. 三軸試験での圧密は,ため池堤体の応力状態を考慮し,初期せん断応力が作用しない状態と初期せん断応力が作用する状態で実施した.また,試験条件に応じ,圧密中に供試体へ微小な応力振幅の繰返し載荷を実施した.この微小繰返し載荷は,供試体の乾燥密度を大きく変化させずに土粒子構造をより安定的なものとする目的で実施した.これにより,同程度の乾燥密度で土粒子構造が異なる供試体を作製した.上記の供試体に対し,弾性波速度の計測と液状化強度の評価を実施した結果,(1) 緩詰の供試体へ初期せん断応力が作用すると,液状化強度が低下する, (2) 初期せん断応力の有無によらず,微小な応力振幅の繰返し載荷を与えることによって安定的な粒子骨格構造となり,弾性波速度と液状化強度が増加する,(3) 初期せん断応力が作用する条件では,弾性波速度の増加率に対する液状化強度の増加率が大きくなる,ことが確認された.これより,初期せん断応力が作用する盛土構造物においては,サンプリング時における試料の乱れなどの影響によって原地盤と室内試験で異なる弾性波速度が観測された場合,室内試験で求めた液状化強度と原地盤の液状化強度の相違が,初期せん断応力が作用しない水平地盤などと比較して大きくなることが考えられた.
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