2019 Fiscal Year Research-status Report
住民主導の地区計画の理論化完成に向けたマネジメントサイクルの実態解明
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19K06294
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
九鬼 康彰 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (60303872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内川 義行 信州大学, 学術研究院農学系, 助教 (20324238)
田村 孝浩 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (20341729)
中島 正裕 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80436675)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 計画管理 / 条例 / 土地利用計画 / 内容分析 / 住民意識 / 継続性 |
Outline of Annual Research Achievements |
九鬼は神戸市の共生ゾーン条例を取り上げ,その目的である土地利用コントロールの実態と効果を条例施行の前後20年以上の転用データを分析して検討した。その結果,条例施行後に行われた開発は住宅と駐車場,資材置き場が54.4%を占め都市近郊の特徴を示したこと,また地区計画との関連をみると計画に位置づけられた開発予定行為のほとんどが実施されず位置づけられなかった開発が行われたこと,しかし用途別のゾーニングにしたがっての開発のため悪影響は起きていないことが確認できた。 また田村は,宮城県が県営事業として策定した15の地区計画について内容比較を行った。その結果,計画の内容に差異はないものの,その情報量や策定方法には顕著な差異が確認された。前者の理由として要綱に策定内容が記載されこれが遵守されたこと,後者の理由は要綱に具体の定めがなかったことが一因と考えられた。また策定過程における情報収集手段として一部の地区では住民参加型のワークショップや悉皆アンケートが実施されたが,具体的な情報収集手段が不明の地区もあった。 次に中島は,住民主導で地区計画が実践されてきた滋賀県甲良町の13集落を対象に、その根底となる行事の継続性に着目した。具体的には、行事の継続が困難となっている4集落を対象に①行事の特性分析、②行事の現状と継続性に対する住民意識の解明を行った。さらに、それらの結果を受けて行事の機能を診断するための評価指標の提案とワークショップの実施により、行事の継続性に資する住民の意思決定支援のあり方について方法論的観点から考察を行った。 最後に内川は,長野県原村の景観計画を対象に,住民主導の計画過程に関する調査を開始した。また、根羽村における山地酪農導入を主とした土地利用計画および台風19号の被災を契機とした災害対応のための計画に関しての検討を行うとともに、一部の報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画調書にあげたように本研究では地区計画のマネジメントサイクルを一つのポイントとしており,今年度はそれを考察するのに適した3つの事例(神戸市,宮城県,甲良町)の計画を入手し,それぞれ地元や関係者との接触を保ちながら分析を行えた点は大きい。またいずれの事例もより詳細な調査を行える関係性を構築できており,今後の調査の進展に期待できる点も上記の評価の理由にあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降はおもに今年度の調査対象事例において,分析の基軸に設定している各論の未達部分に関する調査分析を進める予定である。例として神戸市と甲良町では条例を計画策定の根拠としていることから,各条例が定める主体の特徴を明らかにするとともに実際に運用されている組織の実態との相違点を考察する。また実施を担保するための方策についても掘り下げて検討を進めたい。 さらに新しい調査対象の開拓も積極的に実施する予定である。とくに計画調書にあげた広島県や山口県の条例について事例を収集し,調査の適否を検討したい。 なお2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響を受けて研究メンバー間での情報交換や比較検討の議論を停止せざるを得ない状況にあるため,社会情勢を考慮しながら対面式およびリモート式でのブレーンストーミングを用いた考察の深化も図っていく。
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Causes of Carryover |
いずれも事例調査地でのヒアリングや座談会の機会を複数回設けていたが,新型コロナウイルスの影響によって延期されたことが主な理由である。他にも過去の計画事例を調査する本研究の特性上,関係者を特定することに当初の想定以上の時間と労力がかかったため,予算どおりに調査が実施できなかった面もある。 新型コロナウイルスによる影響で事例調査地への訪問制限などは引き続き行われることが予想されるため,基本的には制限が解除されるまで調査には入らないが,並行してリモートで調査可能な内容を再検討するとともにそのための手段の構築(オンライン会議ツール利用のためのハードウェア整備)も進め,訪問調査と同等の目的を達成できる代替策を早期に講じる。あるいは調査地を変更することによる余剰分の吸収を図れるよう,新規の事例開拓も準備する予定である。
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Research Products
(6 results)