2020 Fiscal Year Research-status Report
多バンドリモートセンシング画像を用いた耕作放棄地の抽出
Project/Area Number |
19K06307
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
木下 嗣基 茨城大学, 農学部, 教授 (10313008)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | リモートセンシング / 土地被覆分類 / 耕作放棄地 / ラフ集合 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題二年目として、昨年の成果に基づきラフ集合理論に基づいた土地被覆分類手法の開発と、多バンドリモートセンシングを用いた耕作放棄地の抽出方法の検討を実施した。 まず、ラフ集合理論に基づいた土地被覆分類手法の開発については、前年度に開発した分類手法の問題点について分析を行った。その結果、分離性が悪い画像データをもちいたクラス分類において、既存の方法と比較して不利になるケースがみられた。これは、本手法は教師データとして与えられた点については、必ずそのクラスに分類されるという性質に由来することが判明した。これに対し、従来は下近似に対して開発されたグレード付きラフ集合を拡張し、上近似にも適用することの検討を行った。その結果、上近似への拡張が可能であるとの結論に達した。 耕作放棄地の抽出については、多時期の画像データを用いる方法を検討した。この手法は複数の衛星センサの画像を用いるものであり、多頻度かつ高分解能のデータが得られる。しかし、同一の仕様のセンサといえどもセンサ間のばらつきが存在するため、単純な利用は困難が伴う。そこで、大気由来の画像間正規化手法の適用を行った。その結果、NDWIまたを用いて水域を除去した状態で正規化手法を適用すると、年間を通じて不変であるべき土地被覆のピクセルにおいて、分光反射率の変動が、正規化前と比較して有意に小さくなることが確認された。加えて雲の影響を可能な限り除去するため画像のコンポジット化と、BISEを用いたデータ補間を併用して年間の画像を作成した。作成された画像データをもとに、SVMを用いて、多時期のNDVIによる耕作放棄地の抽出を行ったところ、放棄レベルを含めた分類を行ってなお、約87%の分類精度が得られた。これは既存の方法と比較して精度が高いものであった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多バンドの衛星画像を用いた耕作放棄地の抽出方法を開発することが、本研究課題の目的であるが、1年目の結果から、多時期かつ多数の衛星センサによる画像を用いる手法に変更を行った。その結果、データの前処理と既存の分類方法の適用により、精度の良い分類行うことができた。これは当初計画における3年目の最低限の達成目標である。 これに加え、ラフ集合を用いた分類方法を拡張し、精度を向上させる方法の目途も立った。本研究課題の標準的な目標を達するには、この両者を組み合わせることが求められるが、3年目において統合を行うことは十分に可能と考えらえる。 当初計画において以下の4項目が今年度実施予定であった。①画像取得の適切な時期の検討、②多時期の画像の差分を用いた分類、③バンド削減手法の検討、④ピクセルベース以外の分類方法の検討。①および③については、ラフ集合による分類や、SVMによる分類では、バンド削減の効果がほとんどないことが確認されたため、それ以上の検討の必要はないと判断した。④についても、農地の地図は精度が非常に高いことが調査の結果確認されたことや、ピクセルベースで精度が得られたため、ピクセルベースの分類精度向上に注力することが妥当と判断した。②に関しては、今年度に用いた、BISEやコンポジットでは実現が困難であった。しかし、その効果は無視できないと判断し、3年目に検討を行うこととした。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる2021年度は、ラフ集合を用いた耕作放棄地の抽出方法の確立を目指して以下の取り組みを行う。 まず、ラフ集合については、1年目に開発したGRS(Grade-added Rough Sets)をもとにした拡張を行う。具体的には、従来の下近似の情報を用いる方法に加え、上近似の情報も併せて用いる分類方法の確立を行い、そのコーディング、実行および精度検証を実施する。この成果については国際誌(例えば、IEEE Transactions on Geoscience and Remote SensingまたはThe ISPRS Journal of Photogrammetry and Remote Sensing)への投稿を行う。 また、耕作放棄地抽出のための画像処理方法については、これまでの成果を国際誌(例えば、Remote Sensing of EnvironmentまたはInternational Journal of Remote Sensing)に投稿を行う。2年目に実施予定であったNDVIの時間変化も情報として用いる分類や、NDVI以外の画像情報(各バンドの分光反射率)やその変化率を用いる方法の開発を行う。 最終的に、拡張されたGRSと画像処理の両者を統合して、耕作放棄地の高精度な抽出方法の確立を行い、その成果を学会(例えば、日本リモートセンシング学会または日本写真測量学会)にて発表を行う。
|
Causes of Carryover |
2020年度の研究成果について国際誌への投稿を行うことを予定していたが、成果の取りまとめに時間がかかったため年度を超えて投稿することとなった。そのため、英文校閲料の繰り越しを行う。また、2020年度はCovid-19により予定した学会発表が行えなかったため、2021年度に学会発表を行うため繰り越しを実施する。
|