2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06320
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
横須賀 洋平 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40459219)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 張力安定構造 / 農業用ハウス / 座標仮定有限要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,常時被災発生地以外の異常な気象変動による農業用ハウスの被災例が全国各地で報告されている.人命被害はなくとも,農林水産業における被害は甚大なものである.被害のあった農業用ハウス,特に細径のパイプハウスは異常な気象変動による外乱に対する剛性が得られておらず,また剛性を十分に上げると経済性を欠く構造物となってしまう. 本研究の目的は,軽量で高剛性な力学特性を持つ張力安定化補剛による構造システムを農業用ハウスに導入することで,経済性と構造剛性に優れた農業用ハウスの設計を目的とする.これまでに,張力安定化補剛による構造システムは,ケーブルとトラス部材による軸抵抗型の1次元要素の直線材を利用した自己釣合い形状を導出してきた.これに加え,アーチ型架構を実現するための梁要素,ビニールやETFE膜などを実現する膜要素の複合要素による自己釣合い形状を求めることが必要となる.本研究では,ケーブルや膜の自己釣合い形状を求める座標仮定有限要素法を用いる.しかし,曲線材を表す梁要素は,曲率を座標関数で表現する定式化が必要となり,これを厳密に求める場合,複雑な計算が必要となる.令和2年度における研究実績は,マルチボディダイナミクスの分野で実績があるAbsolute Nodal Coordinate formulation (ANC法)を参考として,座標仮定有限要素法と組み合わせて自己釣合い形状が求められる梁要素の定式化の検証を行った.平面問題におけるアーチ架構モデルの非線形解析による数値結果の妥当性を確認した.同時に、幾何学的変分問題として,アーチ梁を有する膜構造の形状決定手法を提案し,力学的性能を検証している段階である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況はおおむね順調に進展している.研究計画書に記載の張力安定化補剛による構造システムは,軸抵抗のみを考慮してケーブルとトラスの要素を与えていた.しかし,接合部の固定度を想定すると剛接合を踏まえた構造解析を必要とする.当初予定していたケーブルとトラスの直線材に,多様な自己釣合い形状が求められる曲線材や膜材の要素を加えた.これらの要素を加えることにより,多様な自己釣合い形状が得られるとともに,耐風性を評価する応力変形解析においてより正確に変形挙動を表すことが可能となる.実験モデルをケーブルとトラスのみで製作することは可能であり,研究計画書に記載のとおりである.曲線材や膜材を追加したモデルの製作は,解析の定式化とともに進めていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は以下のとおりである. 1) 構造剛性に優れた農業用ハウスの設計のために,多様な自己釣合い形状を得る座標仮定有限要素法と組み合わせた梁要素の定式化を進める. 2) 自己釣合い形状を得る解析条件の設定を検討し,耐風性に対する構造剛性に優れた農業用ハウスの設計を定める. 3) 耐風性を評価する解析を行うことで妥当性を検証し,張力導入により剛性が変化する実験用モデルの製作に着手する. 4) 実験用モデルの張力導入や簡易載荷による応答値を評価し,妥当性を検証する.
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Causes of Carryover |
実験用モデルの仕様決定・設計が計画より遅れており,一部の材料や製作加工の発注に至らなかった.当初計画どおり、実験用モデル製作のための費用に充当する.
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