2020 Fiscal Year Research-status Report
Extraction of high-order information by deep learning from environment monitoring data on greenhouses
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19K06323
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
星 岳彦 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (80219162)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エッジコンピューティング / 環境予測 / Python / 多層パーセプトロンモデル / UECS |
Outline of Annual Research Achievements |
深層学習技術を用いて,スマート農業の実現に繋がる高次情報抽出の可能性を検討した.昨年度の検討で,深層学習モデルと重回帰モデル予測結果とを比較し,深層学習を高次情報の抽出に用いる有効性が確かめられたので,今年度は,その学習結果を搭載した廉価小型コンピュータ(Raspberry Pi)を植物生産施設に設置し,UECSプラットフォームで収集されたリアルタイムの環境計測制御データで予測させるエッジコンピューティングによる専門的異常監視の可能性について検討した.UECS環境制御されたイチゴ高設養液栽培ハウス(面積120 m2)で得られた環境計測制御に関するデータの欠測値を除いた430,789組の8割を学習に,2割を評価に使用し,単純パーセプトロン回帰モデル(17入力,1出力,隠れ層136細胞×5層)の学習で得られた,正規化パラメータ,荷重値を使用して,ハウスに設置した予測機で予測させた.今回,学習データセットが約1年間分増加したことで,DLの平均相対誤差が約半分になった.リアルタイム環境データからの予測機には,Raspberry Pi 3 B+を3台使用し,それぞれ,室内気温,室内相対湿度,室内CO2濃度を予測させた.学習システムと同版のPythonと深層学習ライブラリを導入してプログラムを作成した.UECSの環境計測制御UDPパケットを受信し,リアルタイム予測用入力変数を生成し,リアルタイム予測値をUDPパケットで1分毎に送信させた.2021年2月~3月のリアルタイム予測をさせたところ,3項目とも学習時とほぼ同じ相対平均誤差で予測できた.室内CO2濃度のリアルタイム予測では,早朝のCO2強制施用をうまく予測できている.途中のCO2濃度センサ補正値の変更,燃焼式CO2施用機の意図的停止など,異常と認められにくい程度の想定外変化が実測値との誤差に現れ,高度監視の可能性が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載した本研究の目的は,労力とコストが必要な制御機器の動作状況や環境制御などの専門家等による現場・記録チャートの目視による点検・解析を必要とせずに,環境モニタリング装置の導入施設の環境記録データのみから高次情報を抽出できるようにすることである.対象になる高次情報とは,a)ノウハウの抽出,b)異常およびその前兆情報の抽出c)関連情報の抽出の3点である.最終的な目標は,施設の環境記録データから,従来の方法では困難な,前述した高次情報の抽出が可能な深層ANNを利用したモデルの構成を提案することである.昨年度,今後の研究の推進方策には,研究成果の農業生産現場への早期普及を目指し,より廉価で,生産現場で使用可能性のあるRaspberryPiなどのCPU基板に移植して,UECSプラットフォームでのオンライン使用可能性の評価を試みると記載した. 本年度は,学習結果を搭載した廉価小型コンピュータ(Raspberry Pi)を植物生産施設に設置し,UECSプラットフォームで収集されたリアルタイムの環境計測制御データで予測させるエッジコンピューティングによる専門的異常監視を検討した.そして,異常と認められにくい程度の想定外変化が実測値との誤差に現れ,高度監視の可能性が示された.さらに,光合成モデルによるリアルタイム光合成速度を予測できるUECSガジェットとイチゴ高設養液栽培のリアルタイム吸液・吸肥量のUECS計測システムを開発でき,環境情報と組み合わせた植物の生理的情報のビッグデータを得る目途が付いた.新型コロナ感染症のため出張を計画通り実施できなかったが,これらの学会発表もオンラインであるが実施できた. 以上より,上記の区分の進捗状況であると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
DLモデルは学習に用いたデータセットの巧みな内挿技術とみなせる.つまり,想定内の状況に対する予測技術であると考える.ローカルな予測モデルを施設内でリアルタイムに適用し,実測値との誤差を観察する.もし,一定の閾値からの遺脱を観察した時には,何らかの想定外の事象が発生していると推定できる.数多くのセンサ,機器が設置されている植物生産施設に発生する,異常低温などの異常値で検知される致命的異常状態の発生まで待たず,本研究で検討したシステムは,機器やセンサの劣化,人為的環境制御設定ミス,異常気象の始まり等,想定外で予兆的な異常を検知できる高度監視の可能性を持つと期待する. 次年度は,施設性能の経年劣化,気候変動,生産戦略の変更,技術向上などの長期的な変化を適切に反映させるための転移学習(TL)の導入を考えたい.そして,ハウス内設置可能な最近発売されたJetson Nano等の低コストGPUボードを用いて,TLで状況変化に適応しつつ,高度監視を行う低コストで実用的なUECSエッジコンピューティングシステムの構築を目指したい. また,作物の光合成速度,養水分吸収などの生体情報データと環境データの関係を深層学習させ,作物の生理状態に関する高次情報の抽出可能性についても,最終年度の限られた時間ではあるが,一部検討したいと考える.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症のため、学会等もオンライン開催になり、出張旅費の使用ができなかった。また、学生も学内入構禁止などがあり、研究補助のアルバイトを任用できなかったため。次年度では、新型コロナ感染症の影響がはっきりしないが、学会発表等の旅費に使用可能であれば、それに充当したい。もし、難しければ、深層学習等に用いるコンピュータの処理能力向上に物品費として使用し、有効活用したい。
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Research Products
(5 results)