2020 Fiscal Year Research-status Report
Evaluating acceptable conditions of soils around heat exchanger for geothermal heat pump system
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19K06327
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
岩田 幸良 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 上級研究員 (70370591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 芳樹 日本工営株式会社中央研究所, 総合技術開発第2部, 課長 (60463577)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地中熱ヒートポンプ / 不飽和帯 / 水蒸気移動 / 熱伝導率 / コンタクト資材 / 砂 / ローム / 移流による熱輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.不飽和土壌中の水蒸気移動を考慮した数値シミュレーション手法の開発 昨年度開発した水平型地中熱ヒートポンプ(以下、HGHP)周囲の不飽和土壌における水蒸気移動を考慮した熱輸送量を計算する方法について、水蒸気移動による熱輸送を考慮した見かけの熱伝導率を計算するために必要なパラメータ(ε)を、乾燥密度や間隙率等の土壌の基本的な物理性から推定する手法を開発した。開発した手法を用いて試験圃場の物理パラメータからεを土壌水分量の関数として表し、試験圃場の土壌水分量の実測値から、試験圃場ではε=3が妥当であると考えられた。そこで、この値を用いて見かけの熱伝導率を地温の関数として与えて、3次元の数値シミュレーションを実施したところ、水蒸気移動を考慮しない従来法に比べ、熱交換器内の不凍液の温度の推定精度が向上することが確認された。これにより、現場から土壌を採取して煩雑な実験を実施しなくても、基本的な土壌物理性を特定するだけで簡易的に見かけの熱伝導率を測定することが可能になった。 2.雨水の浸透による熱輸送の簡易計算手法の開発 雨水の浸透に伴う移流による熱輸送量を、熱交換器内の不凍液の温度と地温の差や、数値シミュレーションソフトウエアを用いて計算した水フラックスの値から、簡易的に計算する手法を開発した。開発した手法を用いて実測値と推定値の比較を行ったところ、上記1の水蒸気移動による熱輸送ほどではないが、推定精度が向上することが確認された。 3.コンタクト資材の有無による採熱効率の違いの野外観測試験の実施 昨年度に整備したコンタクト資材を使わないで水平型ヒートポンプの熱交換器を埋設した試験区と、コンタクト資材として砂を熱交換器の周囲に充填した試験区で熱交換器内の不凍液の温度を比較したところ、両者に明確な差は認められなかったことから、コンタクト資材を使わなくても十分に土壌と熱交換できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乾燥密度、間隙率、粘土含量、土壌水分量等の基本的な土壌物理パラメータから水蒸気移動を含む見かけの熱伝導率を推定するためのパラメータであるεを計算する方法の開発に成功した。これにより実験室内で特殊な熱伝導率測定の試験を実施しなくても、水平型地中熱ヒートポンプを導入したい圃場において水蒸気移動を考慮した熱の移動に関する数値シミュレーションが可能となり、データがないことでシミュレーションができない問題が解決された。また、不飽和帯における雨水の浸透に伴う熱の輸送の影響に関する可能性について検討し、この影響が無視できない場合の移流による熱輸送を評価するための簡易的な手法について検討した。これらの手法を組み合わせることで、不飽和土壌特有の水蒸気を含む水の移動のプロセスを、熱水同時移動モデルを用いることなく簡易に計算できるようになり、水平型地中熱ヒートポンプの熱交換器の熱交換効率の推定精度が向上することを確認した。計算負荷が大きい熱水同時移動モデルを用いることなく、高精度で水平型地中熱ヒートポンプの熱交換器の土壌との熱交換効率を計算する手法が確立されたことで、地中熱ヒートポンプの熱交換器の性能を評価するために必要な3次元の土壌中の熱移動の数値シミュレーションを、農業分野で求められる比較的長期間(1年以上)実施しても、パソコンレベルの計算リソースで1日以下の、実質的に許容できる時間内での計算が可能になった。 砂等のコンタクト資材の有無による熱交換器の効率に関する評価については、暖房時にはコンタクト資材の有無による熱交換器内の冷媒である不凍液の温度に明確な差が認められなかったことから、コンタクト資材がなくても十分な熱交換効率が確保できることを示唆するデータを得ることができた。 以上のことを総合的に判断し、本課題はおおむね順調に進行していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回開発した手法はスリンキータイプの熱交換器については精度良く推定できることが確認できたが、直管タイプの熱交換器については系統的な誤差が生じていた。熱交換器周囲のコンタクト資材の有無を比較した圃場試験では直管タイプの熱交換器を使用していることから、直管タイプの熱交換器でシミュレーション結果が実測値と一致しなかった原因について今後検討し、可能であれば適切な方法で計算結果を補正することで推定精度を向上させる。推定精度を向上させた後、コンタクト資材を用いない場合の数値シミュレーションを実施し、実測値と比較することで、開発した手法がコンタクト資材を用いない場合にも適用可能であることを検証する。さらに、コンタクト資材の有無による圃場レベルでの比較試験を夏の冷房時にも実施し、コンタクト資材の有無による冷暖房時の熱交換器の採・放熱効率の違いを評価する。さらに、熱交換器を自動埋設した際に生じると予想される土壌の密度変化に伴う熱交換効率の変化について検討し、土壌の密度の減少に伴う熱交換器周囲の熱伝導率や熱容量の低下が地中熱ヒートポンプの運用にとって致命的な影響を受けないかを検討する。 これらの研究を推進することにより、最終的には地中熱ヒートポンプの自動埋設が実現可能であることを科学的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナ渦で予定していた海外や国内の学会に参加できなかったことから、次年度に予算を繰り越し、得られた成果を広く発表する予定である。令和3年度は最終年度であるが、コロナ渦で引き続き成果の発表が難しい場合には、研究期間の一年間の延長、あるいは研究成果の最大化のために新たな実験を組む等の研究計画の変更を検討する。
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Research Products
(2 results)