2020 Fiscal Year Research-status Report
茶園土壌の有機物分解動態と,炭素貯留への粗大有機物の役割解明
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19K06335
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
南雲 俊之 静岡大学, 農学部, 准教授 (70362184)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 茶園土壌 / 炭素貯留 / リターバッグ法 / 土壌動物 / 軽比重画分 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの2年間,静岡大学農学部附属藤枝フィールドの茶園圃場で土壌炭素貯留量および炭素動態にかかわる整枝残渣分解を測定してきた。その結果,①土壌母材が同じ隣接する雑木林や畑・果樹園などと比較して、茶園は土壌の炭素含有率が高く、炭素貯留量も多い。②この貯留炭素には腐植物質だけでなく、軽比重画分Light-fractionに相当する微細有機物片が含まれる。③春・夏整枝のリターは、その量が少ない上に、土壌動物による摂食等で速やかに分解して減少する,一方④秋整枝(せん枝)残渣は、その量が多く、低い気温低下にもかかわらず微生物の働きのみで重量減少が起こっている,などの成果が得られてきた。 これらの成果を踏まえて,土壌の母材が同じ普通畑・果樹園・雑木林土壌と比較しながら茶園土壌で高い炭素含有率を説明するため,土壌pHなどの一般成分や選択溶解による土壌の非晶質成分の測定を開始した。これらの分析項目は,微生物活性の変化を介して有機物分解に影響し,また腐植物質の安定化にもかかわるので重要である。また,茶園の風乾細土には微細有機物片からなる軽比重画分が多量に含まれており,比重分画をしてこれを定量化するために予備実験を開始した。また,この微細有機物片(軽比重画分)の生成や整枝残渣の分解動態に対する土壌動物の寄与を明らかにするため,網目サイズによって動物排除/侵入を制御したリターバッグ実験や,残渣リターの有無や動物の種類を変えたミクロコズム実験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
土壌の母材が同じ普通畑・果樹園・雑木林土壌と比較しながら茶園土壌で高い炭素含有率を説明するため,土壌pHなどの一般成分や選択溶解による土壌の非晶質成分の測定を開始した。また,茶園の土壌粒子画分には微細有機物片からなる軽比重画分が多量に含まれていた。研究協力者の弘前大学・青山正和先生(土壌有機物の専門家、恩師)に直接指導いただいて分析する予定であったが,コロナ禍で県境をまたいでの移動が憚られ,独学で予備実験から開始した。土壌分析の遅れが取り戻せておらず、進捗状況は昨年度と同様に「やや遅れている」と自己評価した。 一方、整枝・せん枝残渣発生量の調査に2020年度は欠落が生じたものの、昨年度採取した整枝残渣を使いリターバッグ法による分解率測定を,整枝後の春~夏とせん枝時期の冬とに時期を変えて行った。このとき,とくに上記の軽比重画分・微細有機物片の生成や整枝残渣の分解動態に対する土壌動物の寄与が大きいと予想し,網目サイズによって動物排除/侵入を制御したリターバッグ実験も行った。同時に,整枝残渣分解に対する土壌動物の働きを明らかにするため,残渣リターの有無や動物の種類を変えたミクロコズム実験を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,附属農場で採取した土壌の成分分析、同圃場でのリターバッグ法による分解率の測定を行う。土壌の母材が同じ普通畑・果樹園・雑木林土壌と比較しながら,遅れている土壌pHなどの一般成分や選択溶解による土壌の非晶質成分の測定,新たに微生物の働き,つまり土壌呼吸やセルラーゼなど酵素活性の分析を進めて茶園土壌で炭素含有率が高い要因を明らかにしたい。また当初、粗大有機物(>2mm)としての炭素貯留があると予想したが、これはなく,代わりに微細有機物片(<2mm)が多く見られた。軽比重画分に相当するこの微細有機物片を生む原動力は、耕耘や踏みつけといった農作業に伴う物理的な破砕とともに、土壌動物の摂食・粉砕作用であると考えられた。網目サイズを変えて動物排除/侵入を制御したリターバッグ実験とともに,リター粉砕に関与すると考えうる土壌動物をピックアップして,その有無や種類を変えたミクロコズム実験も行い,土壌動物の寄与を評価する。 2021年度は最終年度でもあり,これらの測定・分析を鋭意進めるとともに,その成果を学会発表し,学術論文として投稿していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた大きな理由は,土壌分析,とくに比重分画の遅れである。遠心分離機は納入されたものの,メーカーから代替ローター・バゲットを借りて予備実験は行える状況にあったものの,発注したローター・バゲットの納期が年度内に間に合わなかったことが大きい。2021年5月にこれらのローター・バゲットは納品され,速やかに経費処理する予定である。最終年度の2021年度は,この比重分画とともに,必要な試薬・器具を適宜購入して土壌分析全般を進めていきたい。
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Research Products
(2 results)