2020 Fiscal Year Research-status Report
D-amino acids-induced root abscission in the water fern Azolla
Project/Area Number |
19K06339
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山崎 秀雄 琉球大学, 理学部, 教授 (40222369)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / 環境応答 / 絶滅危惧種 / 信号伝達 / 精神薬 / Azolla |
Outline of Annual Research Achievements |
アカウキクサはAzolla pinnata、沖縄に自生している水性の熱帯シダ植物である。環境が悪化すると根を自切する特異な環境応答を示す。エチレンやアブシジン酸等の植物ホルモンによって誘導されないことから、既知の器官脱離応答とは全く異なる未知の機構が存在することが示唆されている。本研究では、機構解明のための手がかりを得る事を目的として、アカウキクサ根脱離反応に対する精神薬の作用効果を検討した。統合失調症治療薬(第二世代抗精神薬)、ADHD治療薬、向精神薬(抗鬱薬)、パーキンソン病治療薬として知られている12種類の化合物について作用効果を調べた。各種精神薬を培地(pH 5.8)に加え、根の脱離率を指標として薬理効果の観察を行った。検討した化合物の中で、向精神薬、第二世代抗精神薬の一部に、高い脱離率を示す効果が認められた。効果が見られた精神薬に共通する作用機序として、D-アミノ酸酸化酵素(DAO)の阻害活性が示唆されている。これらの精神薬は、DAO活性を阻害することによって細胞中のD-セリン濃度を上昇させ、NMDA型グルタミン酸受容体を活性化させると考えられている。アカウキクサにおいて、D-セリンの効果を確かめたところ、1時間以内に脱離が完了する顕著な脱離誘導効果が認められた。これらの実験結果は、向精神性薬が根脱離応答を誘導できることを示唆している。次に、抗精神薬のD-セリン誘導性根脱離応答の阻害・抑制効果を調べた。精神薬で前処理を行った後、D-セリン誘導性の根脱離応答反応に対する効果を観察した。検討の結果、抗躁薬、統合失調症治療薬、第二世代抗精神薬に顕著な抑制効果が見られた。これらの精神薬はNMDA型グルタミン酸受容体を阻害し、興奮性神経伝達を抑制していると考えられている。得られた実験結果は、抗精神薬が根脱離応答に対しても抑制的に働く事を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
D-システインの効果の発見に続き、D-セリンの効果を発見することができた。D-セリンの生理学的効果は、ヒト脳神経研究で明らかになっていた事から、アカウキクサに対する精神薬の作動効果を確かめた。その結果、アカウキクサの根脱離応答に対する精神薬の効果が、ヒト神経系と同じである事が発見できた。当初の予想を上回る進展があったと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
D-セリンの作用は、ヒトの脳神経細胞の興奮制御とアカウキクサの根脱離とが機構上極めて類似性が高いことを示唆する重要な発見である。今後の研究の推進のために、メカニズムの同一性の証明に研究主眼を移行させる。アカウキクサの根脱離応答に、ヒトNMDA型受容体類似機構が関与していることを薬理学的に証明し、併せて、カルシウム信号伝達系の関与を細胞生物学的手法によって明らかにする。
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Research Products
(2 results)