2020 Fiscal Year Research-status Report
逆相カラムでできる無機陰イオン分析-分離機構の解明と水環境分析への応用-
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19K06348
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Research Institution | Toyama Institute of Health |
Principal Investigator |
健名 智子 富山県衛生研究所, 化学部, 上席専門員 (60416089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小玉 修嗣 東海大学, 理学部, 教授 (70360807)
山本 敦 中部大学, 応用生物学部, 教授 (60360806)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 無機陰イオン / 逆相カラム / HPLC法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,通常イオンクロマトグラフィーにより分析されている無機陰イオン分析をより容易に行うため,汎用的な逆相カラムおよびUV検出器を用いる無機陰イオン類の簡便かつ精度の高い新規な分析法を開発することを目的とする。 本研究課題に取り組むまで,申請者らは,オンラインで金属イオンと配位させることにより親水性の高い化合物をHPLC-UV法により選択的かつ高感度に分析する方法を開発してきた。その中で,モリブデン酸ナトリウム含有リン酸移動相を用いた逆相HPLC-UV分析系において,塩化物イオンや硫酸イオンを分離・検出することができることを見出した。 研究初年度は,この逆相HPLC-UV分析系における無機陰イオン類の分離・検出機構を解明するため,塩化物イオンや硫酸イオンといった通常の陰イオンのほか,ヨウ化物イオン,チオシアン酸イオン,過塩素酸イオン等の疎水性陰イオンや炭酸水素イオン等について分離挙動を調べた。また,これら陰イオンのモリブデン酸ナトリウム含有リン酸水溶液中での発色状況についても精査した。 研究二年度である本年度は,無機陰イオン類の逆相HPLC分析における保持・検出機構を解明するため,移動相にリン酸以外の酸や塩を用いた場合やモリブデン酸ナトリウム含有しない移動相を用いた場合の無機陰イオン類の保持・検出挙動を,UV検出器のみでなく,電気伝導度検出器やPDA検出器を用いて調べ,比較検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,モリブデン酸ナトリウムの添加の有無,加える酸の種類,酸に変えて塩を添加と移動相の組成を変えて各無機イオンをUV検出器で測定するとともに,電気伝導度検出器を用いてピークの保持挙動を,PDA検出器を用いてその検出挙動を調べた。その結果,モリブデン酸ナトリウムの添加の有無でピークの保持時間は変わらないこと,モリブデン酸ナトリウムの添加の有無にかかわらずUV吸収を持つ陰イオンのピークはそれぞれの吸収波長に吸収極大があること,モリブデン酸ナトリウム含有する酸移動相(pH 2.8)を用いた場合UV吸収を持たない陰イオンは217 nmに,モリブデン酸ナトリウム含有する塩移動相(pH 4.7)を用いた場合UV吸収を持たない陰イオンは207 nmに吸収極大があることが分かった。モリブデン酸ナトリウムはpHによりその存在形態が変わり異なる吸収を持つ。これらのことから, 逆相カラムでの無機陰イオンの分離は,無機陰イオンの逆相カラムへの保持によること,移動相にモリブデン酸ナトリウムをくわえることにより吸収を持たない無機陰イオンの間接吸光度検出によるUV検出が可能になること,酸や塩の種類を変えることにより無機陰イオンのUV・電気伝導度検出器による分離・検出が改善されることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度には,モリブデン酸ナトリウム含有リン酸水溶液中でリンモリブデン酸と付加体を生成した無機陰イオンが,逆相HPLCで分離されUVおよび電気伝導度検出器で検出されると報告した。 しかしながら研究二年度において,逆相カラムでの無機陰イオンの分離は,無機陰イオンの逆相カラムへの保持によること,リン酸移動相にモリブデン酸ナトリウムをくわえることにより,無機陰イオンのUVおよび電気伝導度による分離・検出が改善されることがわかった。 研究最終年度である研究三年度は,研究一・二年度の結果を踏まえ,様々な環境水試料をこの逆相HPLC法に適用し,その実用性を検証する。また,特に環境汚染物質として急速に注目されている過塩素酸イオンについて,その環境水中での動態調査を行う。さらにこの逆相HPLC法において無機陰イオンの間接吸光度検出によるUV検出が可能である移動相を検索する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により,本年度参加を予定していた分析化学討論会および分析化学会が紙面開催・Web開催となり,旅費が不要になった(参加登録費のみ支払い)。 本年度は,UV検出器のほか、電気伝導度検出器やPDA検出器を用いて,HPLC法での無機陰イオン類の保持・検出挙動を調べたが,これらの検討を行うにあたり手持ちの消耗品でまかなえた。 次年度は,検討した逆相HPLC法による無機陰イオン類の分析法を様々な環境水試料を適用するため,カラム・固相カートリッジや標準品等多くの消耗品,また,得られた研究成果を論文に投稿するための英文校閲・投稿料が必要であり,繰り越した分と合わせて用いる予定である。
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Research Products
(2 results)