2019 Fiscal Year Research-status Report
フィタン酸の異性体別機能性評価~畜産物摂取によるヒトの健康増進を目指して~
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19K06356
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
仲西 友紀 宮崎大学, 農学部, 准教授 (20717889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅本 和寛 宮崎大学, 工学部, 准教授 (10274771)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フィタン酸 / 免疫調節作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
フィタン酸は牛乳・牛肉に含まれる分岐鎖脂肪酸であり、免疫調節作用などの生理活性を有する機能性脂質として近年注目を集めている。牛乳・牛肉中のフィタン酸には2つの異性体(3R体と3S体)が存在し、その組成比や含有量は、ウシに与える粗飼料の種類等によって異なる。一方、機能性の面で3R体と3S体の生理活性を比較した報告は無く、どちらの異性体を高含有する牛乳・牛肉がヒトの健康を向上させるのかは不明である。 本研究は、「畜産物摂取によるヒトの健康増進」を目指した基礎研究である。具体的な目的は、3R体と3S体を個別に有機合成し、両者の免疫調節作用を直接比較することで、牛乳・牛肉中に増強すべき異性体がどちらなのかを明らかにすることである。 R1年度はまず、3R体と3S体の有機合成に着手した。天然のフィトールから3R体と3S体のラセミ混合物を合成し、これをアミン系光学分割剤でアミド化した後に、再結晶法とシリカゲルクロマトグラフィーで分離した。その後、それぞれを加水分解することで3R体と3S体を合成した。また合成された3R体と3S体を用いて免疫調節作用に関する機能性評価を開始した。マウスから脾臓細胞を調製し,3R体、3S体もしくは両者のラセミ混合物の存在下で培養した。その後、各種サイトカインの産生量を定量的PCR法で測定した。 3R体および3S体をそれぞれ20 mg程度合成することに成功した。また、3R体と3S体のラセミ混合物を用いた評価によって、フィタン酸がインターフェロン(IFN)-γやインターロイキン(IL)-17の産生を抑制することを確認した。さらに、3R体と3S体を個別に評価したところ、IFN-γやIL-17の産生に対する抑制作用は、3R体と3S体で同等レベルであることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討で、3R体と3S体の有機合成に成功している。また、両者の機能性評価に着手し、IFN-γやIL-17の産生がフィタン酸によって抑制されることが明らかになっている。 3R体と3S体の有機合成については次年度以降も継続する予定である。また、次年度以降は、IFN-γやIL-17以外のサイトカイン産生に対する3R体と3S体の効果を評価し、さらにその作用メカニズムを検討する予定である。本年度の成果は、それらの礎となるものであり、「おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
R1年度の実施内容に準じて、3R体と3S体の有機合成を継続する。また、3R体と3S体の機能性評価を拡大する。具体的には、IFN-γやIL-17以外のT細胞系サイトカイン(IL-2、IL-4、IL-10など)の産生に与える影響や、T細胞の分化を司る転写因子(T-bet、GATA-3など)の発現に与える影響を、3R体と3S体の異性体別に評価する。また、T細胞以外の免疫細胞種の機能に与える影響も調査する。さらに、フィタン酸の作用メカニズムにおけるペルオキソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)の関与を調査するため、PPARをノックダウンした条件下でも、上記の検討を行う。
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