2019 Fiscal Year Research-status Report
卵子形成における副腎皮質ホルモンの役割とその調節機構の解明
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19K06365
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
手塚 雅文 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (40311526)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 卵母細胞 / 初期胚 / 卵巣機能 / 副腎皮質ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
発育初期の卵胞を多く含む卵巣皮質では鉱質コルチコイド受容体(MR)の高い発現が認められた。そこで免疫組織化学によりMRの所在を確認したところ、卵母細胞と血管内皮細胞で明確な発現が認められたが、卵母細胞を除く卵胞組織では発現が認められなかった。一方卵胞発育から成熟期の卵胞組織ではMRと副腎皮質ホルモン合成酵素の発現が認められた。黄体におけるMRと副腎皮質ホルモン合成酵素の発現はプロジェステロンの合成が高まる開花期で共に増加した。また卵胞液中にはアルドステロンとその前駆体であるデヒドロコルチコステロンが存在していることから卵母細胞が発育初期から排卵に至るまで内分泌/傍分泌的な鉱質コルチコイドの影響下にあることが示唆された。 ウシ初期胚の発生段階におけるMRの発現を定量した。MRは受精後4細胞期まで卵母細胞と同様に高い発現が認められたが、それ以降8-16細胞期に起こる母性-胚性転移を挟んで急激に低下した。このことから鉱質コルチコイドが胚発生の初期に至るまで、何らかの働きをしていることが示唆された。 卵母細胞ではMRが高く発現している一方、GRの発現は低い。アルドステロンはMRを介して卵母細胞の成熟を促進するが、高濃度のコルチゾールは阻害する。MR特異的なアンタゴニストはコルチゾールの阻害効果を抑制した。また卵母細胞で高い活性が認められる糖質コルチコイド非活性化酵素HSD11B2の働きを抑制すると、より低濃度のコルチゾールによって卵母細胞の成熟が阻害された。以上のことから、ウシ卵母細胞はMR を介して鉱質コルチコイドと糖質コルチコイド双方に晒されるが、糖質コルチコイドをHSD11B2によって非活性化することでその阻害効果から逃れていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究において、卵巣組織と卵母細胞、および初期胚における副腎皮質ホルモン合成酵素と受容体の発現動体を概ね明らかにすることができ、2年目の研究テーマを絞り込むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度の結果をもとに主に以下の2つの課題に取り組む。 1.卵胞から細胞を採取し、in vitroで黄体化させることで、副腎皮質ホルモン合成酵素や受容体の発現動態とそのメカニズムを明らかにする。またこれらのアゴニストやアンタゴニストを用いて、副腎皮質ホルモンが卵胞・黄体の生理機能に与える影響を明らかにする。 2.微小卵胞、もしくは微小卵胞を含む卵巣皮質を切り出し、in vitroで培養する系を確立する。また副腎皮質ホルモンのアゴニストやアンタゴニストを用いて、副腎皮質ホルモンが微小卵胞や卵母細胞の生理機能に与える影響を明らかにする。 研究遂行上の課題:今年3月より新型コロナウイルス感染防止の観点から卵巣の採取が困難になっており、状況によっては今年度の研究に影響を与える可能性がある。その場合は今までに集積したサンプル(卵胞、黄体、初期胚)を利用して、副腎皮質ホルモンが影響を与える可能性がある因子の網羅的解析を進める。
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