2020 Fiscal Year Research-status Report
卵子の減数分裂特異的な細胞内温度変化の機能的意義の解明
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19K06369
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
星野 由美 日本女子大学, 理学部, 講師 (10451551)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 卵子 / 細胞内温度 / 卵子の健常性診断 / 発生能予測 / 細胞診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、卵子の細胞診断技術の開発を視野に、細胞内温度に着目して、その機能的意義の解明に取り組んでいる。本年度は、①卵子内温度は何に影響を受けているのか、②細胞内温度は核成熟と細胞質成熟にどのように寄与しているのか、を明らかにするために解析を行い、以下の結果を得た。 まず、成熟卵子の温度分布について、排卵後、異なる時間で卵子を採取し、時間経過に伴う変化を調べたところ、過熟が進むにつれて細胞内の高温領域が減少する傾向にあることを確認した。細胞内温度が何に依存しているのかを明らかにするため、エネルギー産生器官であるミトコンドリアに着目して、その局在と膜電位を蛍光シグナルとして検出したところ、細胞内温度分布はミトコンドリア膜電位の高い領域とほぼ一致することを確認した。経時的に調べてみると、ミトコンドリアの膜電位のほうが温度よりも早期に変化を示すことから、細胞内の温度はミトコンドリア活性に影響を受けているものと考えられた。 次に、紡錘体形成および染色体分配への影響を解析したところ、分裂中期の紡錘体周辺に高温領域が存在することを確認した。また、紡錘体極にも高温を示すシグナルが観察されていることから、紡錘体の維持に何らかの関係があるものと推察されるため、現在詳細な解析を進めているところである。この高温領域は紡錘体の中心部(染色体が存在する赤道面)には存在しないことから、染色体の整列には直接的な影響はないものと考えられる。 これまでの結果から、細胞内温度が細胞分裂に関与しているものと考察できる。その詳細な役割については、3年目に明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目の研究目標は、細胞内温度が、①何に影響を受けているのか、②卵子の核と細胞質の成熟にどのように寄与しているのか、を明らかにすることであった。当初計画していた研究課題については概ね実施できたが、加齢モデルマウスを用いた検証実験がまだできておらず、核成熟における解析は進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、継続中の2年目の課題(紡錘体形成および染色体への影響)を遂行するとともに、当初予定していた課題を実施する予定である。具体的には、卵子形成から成熟に至るまでの一連の減数分裂と細胞内温度との関連性を検証する。また、細胞内局所的な温度制御を行うことで、温度が果たす役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大による緊急事態宣言を受け、前半期は、所属機関の方針により、研究室内へ入室が制限されたことから、飼育する動物を最小限にとどめて実験を行うことになった。また予定していた学会等参加旅費の執行がなかったことから研究費の繰り越しが発生した。現段階では、概ね通常通りの研究活動ができる状況に回復していることから、2年目に実施できなかったマウスを用いた実験を3年目に繰り越して実施する計画である。
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