2022 Fiscal Year Annual Research Report
卵子の減数分裂特異的な細胞内温度変化の機能的意義の解明
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19K06369
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
星野 由美 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (10451551)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 卵子 / 細胞内温度 / 卵子の健常性診断 / 発生能予測 / 細胞診断 / Pin1 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに細胞内温度が卵成熟に関与していることを明らかにしたが、その作用機序については明らかでない。細胞内の温度は、様々な要因に影響を受けていると考えられるが、本研究では、細胞分裂に重要な役割を果たすPin1(Peptidyl-prolyl cis-trans isomerase NIMA-interacting 1)に着目して、細胞内温度との関連を検証した。Pin1は、プロリン異性化酵素であり、リン酸化したセリン/スレオニンの隣に位置するプロリンに特異的に作用し、タンパク質の適切なフォールディングを促すことで、複数の細胞プロセスにおいて分子スイッチとして機能している。卵成熟においても、Pin1が卵核胞崩壊や極体放出などに重要な役割を果たしていることを明らかにした。すなわち、Pin1は卵成熟過程において一定の発現量を保っているが、卵成熟の進行にともなって局在を変化させ、加齢(過熟)によりその局在性を失う。Pin1欠損マウスを用いた実験から、Pin1の機能不全は、卵子形成や成熟・発生を大きく阻害することを明らかにした。また、卵成熟特異的にPin1を阻害すると、その細胞内温度はコントロールに比べて低い傾向にあった。これまでの研究から、熱産生のメカニズムは、ミトコンドリア活性や脂質代謝に起因すると考えられるが、細胞分裂を制御しているタンパク質の機能も直接的もしくは間接的に関与しているものと考察できる。得られた研究成果の一部は原著論文として公表した。また、細胞内温度が受精・発生能評価に有効であることを確認したため、卵子および受精卵の細胞診断法として特許出願した。
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