2019 Fiscal Year Research-status Report
Attempts to perform genome modification towards donor cells for improving SCNT efficiency in pigs
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19K06372
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐藤 正宏 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 教授 (30287099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 和睦 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (70363611)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブタ / 体細胞核移植 / ヒストン / メチル化 / メチル化転移酵素 / ゲノム編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物医学研究に重要な遺伝子改変ブタの作製は、マウスの場合と異なり、遺伝子改変された細胞(主に胎仔性繊維芽細胞)をドナーとする体細胞核移植(SCNT)経由のクローンブタ作製が今でも主流となっている。しかし、SCNT効率が極端に低い。通常、ドナー細胞の核はSCNT直後、卵細胞質内の初期化因子により遺伝子発現様式が幼弱期のものにリセットされる。しかし、ドナー核はこのようなリセットへの対応が不十分なため、多くのSCNT胚は以降の発生に異常をきたす。本申請では、強制的に「ドナー細胞の幼弱化(あるいは初期化)」を行い、SCNT後、胚盤胞への発生率向上、SCNT効率の改善がなされるかを検討し、最終的に効率的な遺伝子改変クローンブタ作成を目指す。最近、ヒストンH3K4, H3K9のメチル化がSCNT効率を下げる要因となる報告が出された。そこで、初年度は、既に作成済みの遺伝子改変細胞(未分化細胞マーカー遺伝子OCT3/4のpromoterに駆動される緑蛍光蛋白遺伝子(EGFP)を内蔵)をテスト細胞に用いた。当該細胞をドナーとするSCNTを行なうと、ドナー核が初期化され、胚は緑蛍光を微弱ながら発する。これはドナー核由来の胚細胞が未分化状態になり、未分化細胞で特異的に発現するOCT3/4遺伝子(promoter)が発動したからと考えられる。この細胞にH3K4, H3K9のメチル化を促すDNAメチル化転移酵素1(DNMT1)遺伝子をゲノム編集で破壊。この細胞をドナーとするSCNTを行い、緑蛍光が増大するかを調べた。「ヒストンH3K4, H3K9のメチル化が阻害されれば、ドナー核が高度に初期化された」と考えられるからである。実験の結果、緑蛍光の増大が見られ、SCNT胚作成におけるDNMT1遺伝子破壊の有効性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、テスト細胞を用いた遺伝子工学的処置によるSCNT改善効果についての検証を目指した。特に、H3K4, H3K9のメチル化を促すDNAメチル化転移酵素1(DNMT1)遺伝子の破壊によるH3K4, H3K9のメチル化解除、それによるドナー核の初期化の亢進の可能性を検討した。具体的には、既に作成済みの遺伝子改変ブタ繊維芽細胞株(未分化細胞マーカーとされるOCT3/4遺伝子の promoterに駆動される緑蛍光蛋白遺伝子(EGFP)発現ユニットを内蔵)にブタDNMT1遺伝子を標的としたCRISPR/Cas9系のsingle guide RNAとCas9蛋白とを混合させた混合液をelectroporationにより導入した。この場合、ブタ細胞表面に発現する糖鎖alpha-Gal epitopeを消化する酵素遺伝子(EndoGalC)発現ベクターも同時に導入した。遺伝子導入後、3日目に細胞を回収し、毒素結合レクチン(IB4SAP)と反応させた。IB4SAPはalpha-Gal epitopeと特異的に結合し、細胞を死滅させる。遺伝子導入され、RNPによるDNMT1遺伝子の破壊、EndoGalC発現によりalpha-Gal epitopeを一時的にではあるが消失させた細胞のみがIB4SAP処理後も生き残る。生じた細胞コロニーを拾い、その中からDNMT1遺伝子が完全に破壊されたと株を選別し、これをSCNTに付した。ゲノム編集していない親株をドナーとするSCNTの場合、発生した胚盤胞は、主にその内部細胞塊において緑蛍光を微弱ながら発する。一方、ゲノム編集処理された株をドナーとするSCNTの場合、SCNT由来の胚盤胞は明確な緑蛍光を発することを見出した。これはDNMT1遺伝子の破壊によりドナー核での初期化が加速したと考えられる。現在、この可能性を別の角度から検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
H3K4, H3K9のメチル化を促すには、ヒストン脱メチル化酵素をコードするヒトKDM4D遺伝子を過剰発現させる手段もある。2020年度では、その可能性を検討する。即ち、KDM4D発現ベクター(pKDM4D;OriGene社より販売)を基にT7 polymeraseを介したin vitro mRNA合成を行う。得られたmRNAをOCT3/4 promoter-EGFPを搭載した遺伝子改変ブタ繊維芽細胞株をドナーとするSCNT胚に細胞質顕微注入する。場合によっては、SCNT胚をKDM4D mRNAを含む液にてin vitro electroporationに付す。発生した胚盤胞において緑蛍光の発現増大が見られるかを観察する。明確な緑蛍光が見られた場合、KDM4D発現によりドナー核での初期化が加速したと考えられる。また、DNMT1遺伝子の破壊 + KDM4D mRNA発現による相乗効果についても検討する。即ち、DNMT1遺伝子が破壊された遺伝子改変ブタ繊維芽細胞株をドナーとするSCNTを行い、得られたSCNT胚にKDM4D mRNAを細胞質顕微注入する(場合によっては、in vitro electroporation)。発生した胚盤胞において緑蛍光の発現増大が見られるかを観察する。一方、遺伝子発現profileを網羅的に検討するため、「DNMT1遺伝子の破壊 + KDM4D mRNA発現を示すSCNT胚 vs. intactな親株」、「DNMT1遺伝子の破壊 + KDM4D mRNA発現を示すSCNT胚 vs. 単為発生胚」の間でRNA seq.解析に付す。DNMT1遺伝子の破壊 + KDM4D mRNA発現によりSCNT胚の遺伝子発現profileが単為発生胚のそれに近似することが期待される。
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Causes of Carryover |
2020年度は成果について論文を作成し、投稿する予定である。そのため、次年度使用額として翌年度分に助成金を請求した。 次年度の研究費の使用計画:2020年度の研究費使用計画は以下の通りである。 物品費:細胞培養用試薬、分子生物学用試薬等の消耗品。旅費:日本分子生物学会への参加・発表と共同研究者との研究打ち合わせ。その他:遺伝子合成および遺伝子の塩基配列決定のための外注、論文校正料、論文投稿料を計上した。
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Research Products
(17 results)