2020 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーの活性化に着目したラクトフェリンの新規機能の解明
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19K06375
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
相澤 修 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (10645899)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ラクトフェリン / オートファジー / 腸管上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
母乳には新生児の健やかな発達に必要な栄養成分に加えて、未熟な免疫機能を補う生理活性物質が多く含有されている。ラクトフェリンは、母乳中に見出された鉄結合性の糖タンパク質である。母乳とともに新生児に摂取されたラクトフェリンは、腸管内において生育に鉄を必要とする病原性細菌の増殖を抑制する作用を持つ。このことから、ラクトフェリンは、免疫系が未熟な新生児における生体防御因子として機能する。加えて、ラクトフェリンには、腸管上皮細胞に対する増殖促進効果や炎症性サイトカインレベルの調節効果などが報告されており、腸管組織に対して直接的に作用することも予想されている。しかしながら、上記のラクトフェリンの生物学的機能を仲介する分子機構は不明である。研究代表者は、生体内におけるラクトフェリンの機能発現メカニズムを探索する過程において、ラクトフェリンが細胞内の大規模分解システムであるオートファジーを活性化させることを発見した。本研究では、腸管組織におけるラクトフェリンの有益な機能の発現におけるオートファジー活性化の役割を明らかにすることを目的とする。 今年度は、昨年度見出されたラット由来腸管上皮細胞株IEC-6におけるラクトフェリンが促進するオートファジーの生理的意義について調べた。IEC-6に対してラクトフェリンを処理することにより、上皮組織の形成に重要な役割を果たす密着結合に関連するいくつかの遺伝子の発現が増加すること、および腸管バリア機能が増強することが明らかとなった。これらの効果はオートファジーの分解の場であるリソソームの機能を阻害する薬剤との同時処理により抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット腸管上皮細胞株IEC-6におけるラクトフェリンにより促進されるオートファジーの生理的意義を調べた結果、密着結合の形成に関連する遺伝子の発現増加、および腸管バリア機能の増強が認められた。また、これらの効果は、リソソーム機能阻害剤との同時処理により抑制された。このことから、当初の計画通り、腸管上皮細胞におけるラクトフェリン促進型オートファジーの生理的意義の一端を明らかにすることに成功した。このことは、今後の生体を用いた研究の推進において重要な成果であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、前年度に明らかとなったラクトフェリン促進型オートファジーの分子機構についてより詳細に解析する予定である。具体的には、siRNAによりオートファジー関連遺伝子をノックダウンし、上記と同様にラクトフェリン処理により腸管バリア機能の増強が認められるか否かについて解析する。加えて、一昨年に明らかとなったマウス腸管組織におけるラクトフェリン受容体分子の発現パターンを手がかりに、生体におけるラクトフェリン促進型オートファジーの存在およびその役割についてアプローチし、炎症性腸疾患の病態改善に及ぼす効果についても検討する。また、本研究で得られた成果を学会発表や論文投稿により広く公表することを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当初計画していたマウスなど生体を用いた実験系の着手が若干遅れたためである。次年度使用額は、計画通りに進行しなかった上記研究のために主に使用する予定である。すなわち、実験動物に関連する消耗品や細胞生物学・分子生物学的解析に用いる消耗品やプラスチック器具類やガラス器具類などを購入する予定である。実験設備は整っているため、設備備品の購入予定はない。
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Research Products
(4 results)