2019 Fiscal Year Research-status Report
生殖中枢を制御する新規神経ペプチド化合物による繁殖機能の賦活化
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19K06380
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
田中 知己 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20272643)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ニューロキニンB / 受容体作動薬 / 黄体形成ホルモン / 卵巣 / 繁殖機能刺激 / ヤギ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では反芻家畜の研究モデルであるヤギを実験動物として用い、キスペプチン類縁物質あるいはニューロキニンB受容体作動薬の性腺刺激ホルモン放出ホルモン分泌調節機構に対する促進作用と卵巣機能に及ぼす効果を検証することを目的とする。本年度は、ニューロキニンB受容体作動薬である新規化合物、B21-750の単回投与が生殖内分泌系におよぼす薬理作用を検証した。発情周期を回帰するシバヤギを用いた。発情観察あるいは超音波画像診断によりシバヤギを発情周期の卵胞期(FP群、n=5)あるいは黄体期(LP群、n=5)のステージに分け、それぞれの時期にB21-750(200nmol)を静脈内に投与した。投与開始2時間前より10分間隔で8時間の頻回採血を行い、血中黄体形成ホルモン(LH)濃度を測定した。また、LP群およびFP群においてそれぞれ黄体および卵胞の刺激作用を検証する目的でプロジェステロンおよびエストラジオール濃度を測定した。その結果、FP群およびLP群ともに投与後1時間において血中LHの濃度が投与前に比べて有意に上昇した。また、LP群において血中プロジェステロンはLH濃度の上昇とパラレルに推移し、投与後1時間において有意に増加した。一方、FP群において投与後エストラジオール濃度の有意な上昇は認められなかった。先行研究において、ニューロキニンB受容体作動薬は発情周期のステージにより、その効力が異なることが知られている。これに対し、B21-750は発情周期の黄体期および卵胞期の両期においてLH分泌を刺激することが明らかとなった。さらに、黄体期においては黄体機能を刺激し、プロジェステロン分泌を促進することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的どおり新規化合物の生殖内分泌機能に及ぼす影響をシバヤギを用いてモニターすることができ、期待された生殖ホルモン分泌刺激効果が得られたため。また、この結果を国際学術雑誌において公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の実験結果を基盤として、異なる用量のB21-750をヤギに投与して繁殖機能を刺激するための最適な投与量を検証し、同時に同程度の量のB21-750を静脈内に持続投与し、異なる作用経路による繁殖ホルモン分泌の反応性の違いを検証する。さらに、これら基礎データをもとに、繁殖機能刺激作用や繁殖障害の治療効果が期待できる投与法を確立していく。具体的には、良好な卵胞の成熟を誘発するためには、薬剤の作用を一定時間持続的に感作させる必要が生じるため、持続投与法として畜産現場で現実的な腟内投与の有効性を検証する。腟内に留置したチューブを介して薬剤を持続微量投与する。黄体形成ホルモン分泌の変化を指標として薬効を評価し、腟内持続投与の有効性を確認する。
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Causes of Carryover |
実験動物の使用頭数および動物に給与する飼料の効率化を図ったため、当初予定していた実験動物にかかる費用を減額できたことによる。次年度は実験の性質上、実験に供するヤギの頭数が増加し、自家繁殖のみでは十分な実験動物数の確保が困難になると見込まれ、実験動物にかかる購入費用の増加を想定している。したがって、翌年度分として請求した助成金と合わせ、執行する計画である。
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