2020 Fiscal Year Research-status Report
ウシ子宮に発現するクロモグラニン Aの生理的役割の解明と低受胎診断への適用
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19K06396
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
高橋 透 岩手大学, 農学部, 教授 (20355738)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | クロニグラニンA / 血管新生 / MMP |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は牛クロモグラニンA(CHGA)の生理活性の探索を行った。2019年度の研究で作製された組換えCHGAタンパク質を用いて、このタンパク質の生理活性を探索した。2019年度の研究によって、C末端側が欠失した短縮型のCHGAと完全長型のCHGAの組換えタンパク質を作製したが、完全長型は分子量約70kDaと約60kDaの2種類の組換えタンパク質が得られ、短縮型は分子量約60kDaのタンパク質が得られた。この組換えタンパク質を、牛血管内皮(BBMC)細胞に添加して培養すると、短縮型のCHGAと完全長型のCHGAはそれぞれBBMC細胞の増殖を促進した。完全長型の組換えタンパク質に含まれる約60kDaのタンパク質は、C末端を欠失させた短縮型とほとんど同一のアミノ酸配列を有する事が示唆されることから、完全長CHGAのC末端側が切断されて生じるN末端側断片は血管内皮細胞の増殖を促す事が示唆された。完全長型のCHGAの発現過程でC末端が切断された断片が生成したことから、この切断部位は構造的に脆弱な部位であり、生体内においてもプロセッシングのターゲットになりうる事が想定された。BBMC細胞を用いた実験の結果から、C末端側が切断されたCHGAタンパク質は血管新生活性を持つ事が示唆され、子宮で産生されたCHGAタンパク質は翻訳後修飾によってN末端断片が生成し、これが血管新生を促進している事が窺われた。 BBMC細胞の培養にCHGAを添加して培養すると、無添加の場合に比べて培養上清中のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)活性が上昇する事が明らかになった。MMPは組織リモデリングに関与する酵素であり、CHGA添加によって発現したMMPが組織再構築と血管新生に促進的に作用している事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度に取得した組換えタンパク質を用いてCHGAの生理活性の評価を実施した。その結果、CHGAが血管新生に促進的に作用し、妊娠維持に重要な役割を担っているであろうとの示唆を得た。本年度の研究によって、これまで不明だった牛の子宮におけるCHGAの生理活性の一端を解明する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施した研究で、組み替えCHGAタンパク質を凍結融解すると60kDaおよび70kDaのタンパク質が減少して、より低分子の断片が生成する事を確認した。CHGAのポリペプチド鎖からはプロセッシングによって数種類の生物活性の異なるペプチドが生成する事が報告されており、今後はこのような派生ペプチドの生物活性についても研究を進める。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で学術集会がオンライン開催となり、旅費の執行ができなかった。次年度使用額は備品費として執行する予定。
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Research Products
(3 results)