2021 Fiscal Year Research-status Report
Gene expression analysis and subtype classification in the somatic cells of the mammalian ovary.
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19K06397
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平松 竜司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70555284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金井 克晃 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (30260326)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マウス / 卵巣 / 性分化 / トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣の卵子形成に重要な役割を担う支持細胞(顆粒膜細胞)において、我々はこれまでに生後すぐの最初の卵胞形成や卵巣髄質領域の卵巣間質腺の形成に関与している特殊なFOXL2陽性顆粒膜細胞系譜存在があること、その一部のFOXL2陽性細胞がSryやテストステロンなどの因子により精巣支持細胞(セルトリ細胞)マーカーであるSOX9の発現を誘導しうる性的可塑性を有しているを明らかにしている。そこで、その胎子卵巣支持細胞の性的不均一性の分子基盤と性的2型の破綻の分子機序を解明することを本研究の目的としている。胎子卵巣での一細胞トランスクリプトーム解析、ならびに体細胞系譜サブタイプのクラスタ解析・統計学的解析により得られた、FOXL2陽性顆粒膜細胞の不均一性に関与すると考えられる候補遺伝子について、ゲノム情報解析とin situ hybridizationによる各因子の発現と発現領域の同定解析を引き続き実施した。その結果、昨年度に同定した胎齢12.5~13.5日生殖腺において発現が確認される遺伝子に加え、FOXL2陽性細胞の不均一性に関与すると考えられる有力な遺伝子をさらに複数同定した。さらに、免疫染色等による形態学的解析や、当研究室の有するHsp-Sryトランスジェニックマウスを用いた熱処理による雌⇒雄性転換誘導系を用いて、候補遺伝子発現細胞とSOX9発現能を有するFOXL2陽性細胞が同一かについての解析を進めている。これらにより、候補遺伝子と胎子卵巣支持細胞の性的不均一性の関係性について明らかにする。また、精巣セルトリ細胞を特異的に除去する遺伝子改変マウス系と胎子生殖腺器官培養法を用いて、in vitroにおけるXY卵巣化誘導系を確立し、XY生殖腺の卵巣化を抑制する精巣支持細胞からの因子の同定も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度初頭は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い研究活動が大きく制限されたため、当初予定していた実験に遅れが生じたものの、データベースによるゲノム情報解析を基にした候補遺伝子の探索を重点的に行ったことで、FOXL2陽性細胞の不均一性への候補遺伝子の役割FOXL2陽性細胞の不均一性に関与すると考えられる有力な遺伝子を複数同定した。これらの候補遺伝子について、当研究室で確立したHsp-Sryトランスジェニックマウスを用いた熱処理による雌⇒雄への性転換モデルを用いて、髄質に存在し、SOX9発現能を有するFOXL2陽性細胞と候補遺伝子発現細胞の一致について解析を進めている。これらにより、候補遺伝子と胎子卵巣支持細胞の性的不均一性の関係性について明らかにできると考えている。また、新たに確立したin vitroでのXY卵巣化誘導系を用いて、そのXYの卵巣化に関わる因子の探索として遺伝子発現解析なども進めており、胎子雌雄の支持細胞の性的不均一性の分子基盤と性的2型の破綻の分子機序の解明に向け前進したと考えられる。これらのことことから、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定したFOXL2陽性細胞の不均一性に関与すると考えられる有力な候補遺伝子について検討を行うにあたり、皮質-髄質軸に沿った発現パターンを候補遺伝子を複数個同定したこと、また性的可塑性を有する細胞は卵巣髄質領域にの一部に少数存在するのみであることが課題となる。つまり、候補遺伝子全ての遺伝子欠損マウスの作製は現実的に本研究内では難しいこと、また少数の細胞に影響が出ても必ずしも明瞭な表現型が得られるか不確実であるとも考えられた。そこで当研究室で確立したHsp-Sryトランスジェニックマウスを用いた熱処理による雌⇒雄への性転換モデルを用いて、全ての候補遺伝子について、その発現細胞と雄支持細胞マーカーであるSOX9発現誘導細胞が一致するかを解析することで、複数の性的不均一性に関与する遺伝子をより確実、直接的に解析できると考え、計画の修正を行った。ただし、マウスの作出などにかかる費用は同様に必要なため、研究費としての変更はないと考えている。現在、この性転換モデル系での候補遺伝子発現解析を進めており、解析は十分に可能である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大による2020年度からの大学等での入構制限等の影響により、当初計画からの遅れが生じたため、研究期間の1年延長を申請している。そのため、その期間が延長した分の使用額として次年度に繰り越しが生じた。
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