2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06401
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村本 裕紀子 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (70436567)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アレナウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
アレナウイルス科にはヒトに重篤な出血熱を引き起こすウイルスが多く存在する。自然宿主である齧歯類の尿や体液に含まれるウイルスが、経気道経路でヒトに感染する人獣共通感染症病原体である。アレナウイルス科ウイルスは抗原性の違いなどから、南北アメリカ大陸で流行する新世界アレナウイルスと、アフリカ大陸で流行する旧世界アレナウイルスに大きく分類される。そのうち、ラッサ熱を引き起こすラッサウイルスは、旧アレナウイルスに属する。西アフリカを中心に毎年30万人程度が感染し、そのうち5千人から1万人が死亡しており、その被害が大きい。しかし、これらアレナウイルスに対する特異的な抗ウイルス薬がないことから、早急に抗アレナウイルス薬を開発する必要がある。さらに近年、発生した出血熱アウトブレイクから新規のアレナウイルスが発見されており、今後も新規アレナウイルスが出現する可能性が高い。そこで本研究では抗体医薬品として利用可能な、全てのアレナウイルスを中和する広域な反応性かつ高親和性を示すモノクローナル抗体を多数作出することを目的とする。 これまでに、ラッサウイルスの表面糖蛋白質GPCの立体構造を認識するモノクローナル抗体を多数作出した。現在、ラッサウイルスGPCに対する中和活性を示す抗体および他のアレナウイルスGPCを認識する抗体を選別しており、今後は、その性状解析を進める。さらに、これまでに得られた免疫源と作出される抗体性状についての知見から、他のアレナウイルスGPCを認識する広域親和性を示す中和抗体作出に適すると考えられる免疫源を使用して、免疫および抗体作出を進めている。さらに本手法を別のウイルス感染症にも応用し、中和抗体や広域親和性を示す抗体を作出した。つまり、本研究で確立した一連の抗体作出方法が、目的の抗体を作出する方法として非常に有用であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度から作出を進めていたハイブリドーマのスクリーニングや性状解析を進めた。さらに、新たに精製ラッサウイルスGPCをマウスに免疫して抗体産生ハイブリドーマを作出し、スクリーニング・クローニングおよび性状解析を行った。その結果、ラッサウイルスGPCの立体構造を認識する抗体産生ハイブリドーマを650個程度作出することができた。現在、これらハイブリドーマが産生する抗体がラッサウイルスGPCを中和するかどうか、また、他のアレナウイルスGPCを認識するかどうか、つまり広域親和性を示すかどうかを順次調べている。これまでのところ、ラッサウイルスと同じ旧世界アレナウイルスに属するリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスGPCも認識する抗体が確認された。今後は、それらクローンが他のアレナウイルスを認識するかどうかを確認する。さらに今年度は、本手法を別のウイルス感染症にも応用し、中和抗体や広域親和性を示す抗体を作出した。つまり、本研究で確立した一連の抗体作出方法が、目的の抗体を作出する方法として非常に有用であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、作出したラッサウイルスGPC抗体の、他のアレナウイルスへの広域親和性および中和活性の確認を完了する。エピトープマッピングを進め、GPC立体構造上に示すことで、GPCの中和メカニズムおよび広域反応性を示すメカニズムの一端を明らかにする。 本研究を進める中で、マウスへの免疫方法とその後作出される抗体の性状についての知見を多く得られた。現在のところ、これまでに作出したGPCの立体構造認識抗体のうち、中和抗体および広域反応性を示す抗体の割合は多くはないことが分かってきた。広域反応性を示す中和抗体作出のため、現在、別の免疫源を使用したマウスの免疫を同時に進めており、再度抗体作出を行う計画である。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナ感染症のために世界的に移動が自粛されたことから、旅費を使用することができなかった。次年度は消耗品費として利用する計画である。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Amplification-free RNA detection with CRISPR?Cas132021
Author(s)
Shinoda Hajime、Taguchi Yuya、Nakagawa Ryoya、Makino Asami、Okazaki Sae、Nakano Masahiro、Muramoto Yukiko、Takahashi Chiharu、Takahashi Ikuko、Ando Jun、Noda Takeshi、Nureki Osamu、Nishimasu Hiroshi、Watanabe Rikiya
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Journal Title
Communications Biology
Volume: 4
Pages: 476
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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