2019 Fiscal Year Research-status Report
Role of MARCKS protein on developmental neurotoxicity of toxic metals
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19K06404
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
白石 光也 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 教授 (20383656)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | メチル水銀 / 重金属 / 神経毒性 / SH-SY5Y細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
重金属による健康被害は現在でも大きな課題の一つであり、一部の重金属は特に脳や神経細胞の発育期に毒性を示すことが知られている。そこで、本研究では分化誘導刺激を行った神経細胞株を発達神経細胞モデルとして、メチル水銀暴露による毒性作用およびMARCKSタンパク質への関与を明らかにすることを目的とした。実験には、ヒト神経芽細胞腫由来の培養神経細胞株であるSH-SY5Y細胞を使用した。分化過程にある神経細胞へのメチル水銀毒性を評価するため、神経の分化を誘導するレチノイン酸を培養神経細胞に処置し、発達神経細胞モデルとして使用した。レチノイン酸およびメチル水銀によるSH-SY5Y細胞への影響を、CCK8による細胞生存率測定およびフローサイトメトリ―による細胞周期解析により検討した。また、MARCKSの発現量およびリン酸化への影響は、Western Blot 法により解析した。培地中のFBS 濃度を低濃度(1%)に調節することで、SH-SY5Y細胞へのメチル水銀処置による影響を長期間(6 日間)観察することが可能となった。レチノイン酸を処置した発達神経細胞モデルでは、未処置群と比べメチル水銀による細胞生存率の低下が増強されていた。この結果は、メチル水銀が分化過程にある神経細胞に、より強く毒性を示す特徴を反映したものと考えられた。一方、レチノイン酸の処置は細胞周期に影響しなかったことから、レチノイン酸によるメチル水銀毒性の増強に細胞周期は関与しないと考えられた。また、SH-SY5Y細胞へのレチノイン酸処置によりMARCKS発現量の減少、およびリン酸化MARCKS量の顕著な上昇が認められたことから、このMARCKSの変化がメチル水銀に対する感受性の増加に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、主に分化誘導処置したSH-SY5Y細胞におけるメチル水銀毒性とMARCKSへの影響を明らかにすることを当初の目的としており、この点において計画はおおむね順調に進展しているものと思われる。また、SH-SY5Y細胞を神経成長因子刺激などにより高度に神経細胞様に分化させた細胞の作成も完了しており、2020年度からの実験系の一つとして有用なモデル細胞として使用することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に進展しているものの、初代培養神経細胞を用いた実験項目については、ややその準備が遅れており、これらの実験項目について検討を進めていく。また、実験計画に従い、培養神経細胞株および初代培養神経細胞を使用した実験に加え、モデルラットを用いた実験項目についてその準備と実施を進めて行く。
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Causes of Carryover |
2019年度の実験計画のうち、特に初代培養神経細胞を使用する項目についてやや遅れがあり、これに関連する経費が次年度使用額が生じた主な理由である。2019年度に実施できなかった実験項目については、2020年度以降に実施する予定であり、これらの実験項目における物品費として使用予定である。
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