2019 Fiscal Year Research-status Report
Study of feline-norovirus-infected cats after reinfection with the same strain.
Project/Area Number |
19K06407
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
高野 友美 北里大学, 獣医学部, 准教授 (20525018)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ノロウイルス / ウイルス性胃腸炎 / 動物疾患モデル / ネコ / 再感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
ノロウイルスは感染性胃腸炎の原因の一つである。世界では年間約7億人がノロウイルス感染症に罹患しており、約20万人が死亡している。ノロウイルス感染症の流行に伴う経済的損失は約7兆円であり、社会的・経済的に大きな問題となっている。日本国内では、病院、学校、介護施設、災害時の避難施設などでノロウイルス感染症が発生しており、集団感染に伴う爆発的流行が認められている。ノロウイルス感染症から回復した宿主は免疫を獲得することで再感染を防ぐと考えられている。特に同一遺伝子型の場合は中和抗体の存在により再感染が防御される。しかし、これらの知見は成人ボランティアを使用した感染実験に基づくものである。即ち、ノロウイルスに感染しやすい乳幼児、高齢者および免疫不全疾患の患者については再感染するか否かは不明である。また、成人ボランティアの場合、試験を行う以前にノロウイルスに感染しており、既にノロウイルスに対する免疫が賦与されていた可能性も否定できない。同じ遺伝子型のノロウイルスが再感染するか否かを明らかにすることは、ノロウイルスの予防薬を開発するためには重要である。これを証明するためには、ヒトノロウイルス感染症を再現できる適切な動物疾患モデルを用いて、ノロウイルスの再感染の有無、およびノロウイルス感染後の免疫動態を検討する必要がある。2019年度は、再感染の確認実験の前実験として、ヒトの成人モデルとしての成ネコにノロウイルスを感染させてノロウイルスが発症するか否かを調べた。その結果、実験に使用した4頭全てにおいてウイルス感染の成立と共に、下痢症状が確認された。また、血中抗ネコノロウイルスIgGの上昇とともに糞便中へのウイルス排出量の減少が確認された。すなわち、子ネコだけではなく成ネコにおいてもノロウイルス感染防御に液性免疫が重要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成熟動物におけるノロウイルスの感染・発症についてはほとんど解析されていなかった。今回、我々はネコノロウイルスフリーの成ネコを使用して感染実験を行ったところ、子ネコの時と同様にウイルスの増殖と共に消化器症状が観察された。すなわち、ノロウイルスに対して免疫が賦与されていない動物では、年齢に関わらずノロウイルスに感染すると胃腸炎を発症することが示された。これは、本研究課題のメインテーマであるノロウイルス再感染の有無を解析する上で重要なデータであると思われる。本知見に関しては2019年度内で学会発表や論文の公表には至らなかったが、上記の結果を踏まえると、2019年度はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ネコノロウイルス感染ネコの血漿からIgGを精製しており、この抗体とノロウイルス抗原との反応性を検討している。今後はこの抗体をネコに受身免疫した後に、ネコノロウイルスを経口接種して防御効果が得られるか否かを確認する。即ち、ノロウイルスの感染および発症の防御に液性免疫が重要か否かを調べる。また、ネコノロウイルスVLPを作製して、ELISAの原理を用いたVLP結合試験を実施して、精製したIgGにネコノロウイルスの細胞への結合を阻止する抗体がどの程度含まれるかについて調査する。
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