2019 Fiscal Year Research-status Report
ひざ関節術後拘縮の新たな予防薬開発に向けた不溶化ヒアルロン酸の有効性の基礎的検証
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19K06411
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上村 暁子 筑波大学, 生命環境系, 博士特別研究員 (60823721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 綾 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70334480)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 術後癒着 / ヒアルロン酸 / 膝関節 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度である2019年度は、関節内癒着に対するの予防効果の検証を主目的として健常ラットを用いて膝関節手術を行った。不溶化ヒアルロン酸膜を術中関節内に適応させ、対側には関節手術のみで不溶化ヒアルロン酸膜を適用させないネガティブコントロールとした。術後は不溶化ヒアルロン酸膜適応の有無に対する患肢使用程度の検証を行った。大腿円周長・膝関節上部および下部における膝関節周囲筋群の廃用性萎縮程度について、不溶化ヒアルロン酸適応側およびネガティブコントロールとして不溶化ヒアルロン酸非適応側肢の術後変化を計測した。さらにゴニオメーターを使用し、関節の屈曲角度と伸展角度を不溶化ヒアルロン酸使用側とネガティブコントロール側とで計測し、ROM(関節可動域)についても検証した。結果は大腿部長、膝上長、ROMにおいて、実験群とコントロール群とで有意差が認められた。以上から、不溶化ヒアルロン酸膜をラット関節内に使用することにより、大腿部および膝上周囲筋群の廃用性萎縮の低減とROM減少軽癒に有効である可能性が示唆された。 また本研究遂行と同時に被検膜として使用している不溶化ヒアルロン酸膜の経時的分解過程の解明についても協力企業と共同して進めてきたが、これらの研究が論文として査読付き国際学術誌に受理・掲載された。 研究遂行2年目である2020年度は、ラットの膝関節手術時に膝関節外に不溶化ヒアルロン酸を、3年目は膝関節内外に適用させ、2019年度同様に実施・検証予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は関節内癒着に対するの予防効果の検証を主目的として研究を遂行した。健常ラットに膝関節楔形切除術を行った(WIラット、雄、5匹、体重400~470g)。不溶化ヒアルロン酸膜を術中関節内に適応させ、対側には関節手術のみで被検膜を適用させないコントロールとした。術後は被検膜適応の有無に対する患肢使用程度の検証を行った。大腿円周長による大腿筋群および膝関節上部・下部の周囲長による膝関節周囲筋群の廃用性萎縮程度について、両群の術後の変化を計測した。またゴニオメーターを使用し、膝関節の屈曲角度と伸展角度を両群とで計測し、ROM(関節可動域)についても検証した。結果は次のとおりである(A: 実験群; B: コントロール群)(統計使用: Mann-Whitney U)。 大腿部長(Median A, 80.00mm, B, 71.00mm; P=0.0397*)、膝上長(Median A, 65.00mm, B, 55.00mm; P=0.0159*)、膝下長(Median A, 40.00mm, B, 38.00mm; P=0.6429)、膝関節ROM(Median A, 114.0度, B, 70.00度; P=0.0079**) 大腿部長・膝上長・ROMにおいて、両群間で有意差が認められた。以上から、不溶化ヒアルロン酸膜をラット関節内に使用することにより、大腿部および膝上周囲筋群の廃用性萎縮の低減とROM減少軽癒に有効である可能性が示唆された。 本研究遂行と同時に被検膜の経時的分解過程の解明についても協力企業と共同して進めてきたが、これらの研究が論文として査読付き国際学術誌に受理・掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
研究遂行2年目である2020年度は、膝関節手術時に膝関節外に被検膜を適用させ、2019年度同様に検証する予定である。ラットにおいて不溶化ヒアルロン酸膜を術中関節外に適応させ、対側には関節手術のみで不溶化ヒアルロン酸膜を適用させないネガティブコントロールとする。術後は、不溶化ヒアルロン酸膜適応の有無に対する患肢使用程度の検証を行う。大腿円周長による大腿筋群の廃用性萎縮程度について、不溶化ヒアルロン酸適応側およびネガティブコントロールとして不溶化ヒアルロン酸非適応側肢の術後経時的変化を計測する。大腿円周長に加えて、膝関節上部および下部の周囲長についても計測し、廃用性萎縮についてその程度を検討する。さらにゴニオメーターを使用し、関節の屈曲角度と伸展角度を不溶化ヒアルロン酸使用側とネガティブコントロール側とで計測し、ROM(関節可動域)についても検証する。さらに3年目は、不溶化ヒアルロン酸膜を関節内外同時に適応させ、この結果を関節内または関節外単独使用の結果と比較し、ひざ関節手術そのものに対する不溶化ヒアルロン酸膜の関節拘縮予防効果について判定を行う予定としている。 ROM低減軽癒の検証から関節の自由な動きを、大腿円周長から筋肉の使用頻度を推定して疼痛等に起因する患肢の使用程度に関する基礎的データを検討する。ラットにおいて関節内および関節外の術後癒着・拘縮に対する不溶化ヒアルロン酸膜の有効性検証とその効果判定を行うことで、人におけるひざ関節術後拘縮の新たな予防薬開発に向けたデータの集積とその検証ができるよう、今後とも研究継続の予定である。さらに、初年度からの研究データに基づき、COVID19が沈静化して世情が許せば国際学会等での発表を行いたい。なお、国際学術誌への研究成果発表も併せて検討中である。
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Causes of Carryover |
申請時と研究遂行時で研究代表者の所属研究先が異なっており、新規所属先での研究遂行が困難であった。そのため研究実施場所を研究分担者所属先とし、物品購入も研究代表者所属先では行わなかった点が理由の一つとして挙げられる。 さらに当初犬の臨床例で開始する予定であったが、より基礎的検証から行うためラットでの検討を優先させたことから、医薬品等の消耗品購入費が安価に収まったことが理由の一つであると考えられる。今後の使用計画においては、犬の臨床例での使用が開始されれば消耗品等の購入費は増加する予定である。
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