2020 Fiscal Year Research-status Report
抗菌薬使用の適正化を目的とした日本型選択的乾乳期治療技術の構築
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19K06413
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
菊 佳男 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 上級研究員 (70370179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 俊彦 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (40709771)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乳用牛 / 乳房炎 / 乾乳期治療 / 選択的乾乳 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗菌薬使用の適正化を目的として、乾乳期用乳房内注入抗菌薬(乾乳軟膏)の選択的利用の可能性について検討した。今年度は、乾乳軟膏の要否を判断する基準を明確にするとともに、乾乳軟膏や乳頭外部シール等を併用しながら安全に乾乳導入する方法を検討した。 供試牛を、乾乳時に乾乳軟膏を注入する使用群(対照区)と乾乳軟膏を使用せず乾乳時と分娩前1週に乳頭シールを装着する不使用群(試験区)に区分した。両区ともに、乾乳前2週、乾乳時、分娩後1~4週の乳汁を採取した。両区の分娩後乳房炎発生状況を、体細胞数、原因菌種及び菌数、治療歴から比較し、抗菌薬不使用の影響と乳頭シールの乳房炎予防効果を評価した。また、試験区において分娩後4週以内に乳房炎を発症した乳房と健康な乳房の乾乳前乳性状を比較し、試験区において分娩後乳房炎を発症しない乾乳時の体細胞数あるいは細菌数等の基準を評価した。 対照区では、分娩後の臨床型乳房炎の発症は無く、潜在性乳房炎発症率は10%に満たなかった。一方、試験区では、各乳房炎の発症率は対照区よりも高い値を示した。対照区において乾乳時検出された黄色ブドウ球菌(SA)は分娩後消失した。試験区からは分娩後にSAや連鎖球菌が検出された。試験区において、分房乳の乾乳前体細胞数及び細菌数が低値であった非感染乳房では、乾乳軟膏が不要となることを示唆した。 乾乳軟膏は、乾乳時に乳房内感染のある乳房には必要な薬剤であるが、感染のない乳房には不要であることが考えられた。乾乳時の乳房内感染状況を体細胞数や細菌数あるいは細菌種によって、乾乳軟膏の要否を判断できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度計画である(1)疫学情報の整理、乾乳軟膏不使用農家の特定および特性解析、(2)乾乳軟膏不要判断基準の確立、(3)乳頭外部シールを用いた選択的乾乳期治療法の検証、について概ね試験を実施することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初の計画通り、(1)供試頭数の蓄積と乾乳軟膏を用いない乾乳時乳房炎予防法の探索、(2)体細胞数等を基準とした選択的乾乳期治療を実施およびその有用性評価、を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当初予定していた出張がすべてキャンセルとなった。それによって、旅費の支出が無くなってしまったことや、出張先でのサンプリングおよびサンプル解析に要する費用が予定と異なることとなった。 今年度は、昨年度から繰り越した予算を用いることによって、昨年度分の採材やサンプル解析を行い、当初の計画が達成できるように研究を進める。
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Research Products
(4 results)