2019 Fiscal Year Research-status Report
新興する鶏病原性大腸菌の流行調査とゲノム情報を利用した特徴解析
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19K06423
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
井口 純 宮崎大学, 農学部, 准教授 (00437948)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸菌 / 鶏大腸菌症 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
鶏大腸菌症は、ブロイラー(肉用鶏)で頻発する細菌感染症である。日本における鶏大腸菌症による経済的損失は大きく、農畜産分野において改善すべき課題の一つに挙げられる。本研究では、宮崎県内の養鶏場で皮下蜂窩織炎(皮下型)または敗血症・漿膜炎(内臓型)を発症した(または養鶏場で発症が確認された)ブロイラー約670羽の病変部から大腸菌を1羽から1株分離し、それらの血清型の遺伝子型(Og:Hg)をPCR法により判定した。皮下型株のOg:Hgは上位からOg6:Hg16(7.9%)、Og36:Hg21(7.9%)、Og71:Hg4(5.9%)となり、全78種類が確認された。また内臓型では上位からOg25:Hg4(10%)、Og161:Hg4(6.3%)、Og6:Hg16(6%)となり、こちらも全78種類が確認された。これまでの報告で、鶏病原性大腸菌(avian pathogenic Escherichia coli:APEC)の主要型とされてきたO1/O2/O78は、皮下型で1/9/40株、内臓型株で0/6/2株となった。皮下型株と内臓型株で比較した場合、皮下型ではOg25:Hg4、Og161:Hg4、O78:Hg9/Hg16が、内臓型ではOg115:Hg31、OgN3:Hg34、Og45:Hg19がそれぞれの型で有意に高かった。 当初の研究計画では、代表株40株のゲノム解析を実施する予定であったが、2019年度先進ゲノム支援のサポートを受けることができ、代表株約280株のゲノム配列の決定を実施した。詳細については現在解析中であるが、Hg4に属するグループ(Og26やOg161などの少なくとも10種類のOg型を含む)が、大きな一つの系統群(phylotype G)を形成しているという新興型の特徴が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していた採材、分離、血清型の遺伝子型判定、ゲノム配列の決定を概ね完了することができた。2019年度先進ゲノム支援のサポートを受けたことにより代表株約280株のゲノム配列決定が実施できた点は、計画以上の進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
健康鶏の消化管より大腸菌を分離する(約300株)。それらの血清型を判定し、その結果を基に代表株を選抜してゲノム配列を決定する(20株程度)。病変部由来株(病原株)と健康鶏消化管由来株(常在株)のゲノム情報を比較し、それぞれの共通性と特異性(特異的な遺伝子)を明らかにする。
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Causes of Carryover |
2019年度先進ゲノム支援のサポートを受けたので、本年度に予定していた自研究室でのゲノム解析の一部を実施しなかった、その為、予定していた研究費の一部を使用せず、次年度に繰り越した。次年度は健康鶏由来株の株数を増やして実施する予定であり、繰り越した研究費はその解析で使用する。
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