2019 Fiscal Year Research-status Report
希少野生ツルに病原性を示すヘルペスウイルスの性状解析および流行状況把握
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19K06424
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
藤本 佳万 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (20613631)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘルペスウイルス / 野生ツル |
Outline of Annual Research Achievements |
鹿児島県出水平野は、ナベツルおよびマナヅル等の希少野生ツルが毎年多数飛来する越冬地として知られている。近年、野生ツルの死亡原因調査を実施するなかで、ウイルス感染が原因となり死亡したと考えられる個体が多数発見されている。これまでの予備実験において、ヘルペスウイルス感染症が死亡原因のひとつである可能性が示唆されており、ウイルス分離およびその流行状況の把握を目的として本研究を実施した。 まず、2018年度に回収された死亡個体の病理解剖において白色結節病変が見られた肝臓および脾臓の乳剤を作製し、全核酸抽出および精製を行った。様々な動物宿主由来ヘルペスウイルス遺伝子に特異的結合する既報のプライマーセットを用いてnested-PCRを実施しところ、10個体のうち4個体由来のサンプルから特異的な核酸増幅(約760bp)が認められ、シークエンス解析の結果により全ての増幅核酸は同一配列であることが明らかとなった。また、推定アミノ酸配列を基にBLAST検索を実施した結果、最も高い相同性を示すヘルペスウイルスにおいても73%程度の一致率であることから、野生ツルに感染していたヘルペスウイルスはこれまでに報告がない新規ウイルスである可能性が示唆された。 次に、死亡個体における本ヘルペスウイルスの感染状況を把握するため、2016-2018年度に死亡したツルから採取したスワブサンプル由来核酸および本ヘルペスウイルス特異的プライマーを用いて、PCR法によるウイルス核酸検出を試みた。プライマーは、決定したウイルス遺伝子配列をもとに設計した。その結果、2016、2017および2018年における陽性率は、それぞれ5.5%、21.6%および15.2%であり、増幅されたウイルス遺伝子は全て同一配列であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた野生ツルにおけるヘルペスウイルスの感染状況を把握することが出来たため、順調に研究は進行していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は野生ツルからのウイルス分離を試み、分離ウイルスの生物学的特性およびゲノム情報を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
理由:本年度の研究計画が順調に進捗し、実験に使用した試薬の消費量が当初予定よりも少なかったため。 使用計画:今後予定しているウイルス分離および遺伝子解析を予定よりも多く実施し、詳細なデータを得るため、次年度予算と合わせて適切に使用する。
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