2020 Fiscal Year Research-status Report
希少野生ツルに病原性を示すヘルペスウイルスの性状解析および流行状況把握
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19K06424
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
藤本 佳万 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (20613631)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヘルペスウイルス / 野生ツル |
Outline of Annual Research Achievements |
鹿児島県出水平野に飛来後に死亡した野生ツルの死因調査において、白色結節を認める実質臓器およびスワブ検体を用いてウイルス分離を試みた。その結果、7羽の死亡ツルから培養細胞に細胞変性効果(CPE)を誘導するウイルスが分離された。分離されたウイルス核酸および昨年度明らかにしたツル由来ヘルペスウイルスのDNAポリメラーゼ遺伝子の配列情報をもとに設計したプライマーを用いてPCRを実施した結果、CPE誘導ウイルスはいずれも陽性を示した。増幅核酸の遺伝情報をもとに系統樹解析を行った結果、分離株はαヘルペスウイルス亜科に分類された。さらに詳細な遺伝学的位置を明らかにするため、次世代シーケンス解析による分離ウイルスの全ゲノム配列を決定した。αヘルペスウイルス間に高度に保存される遺伝子と報告されている8種類の遺伝子(UL2、UL5、UL15、UL19、UL27、UL28、UL29、およびUL30)のアミノ酸配列情報をもとに系統樹解析を実施した結果、分離株はマルディウイルス属に分類される可能性が示唆された。 分離されたヘルペスウイルスの精製ウイルスを用いて、ラット免疫血清を作製した。免疫血清を用いた蛍光抗体法により、感染細胞に特異的蛍光が観察された。また、遺伝子検査により本ウイルスへの感染が明らかにされた野生ツルの病変組織を用いた免疫組織学的検索において、免疫血清は抗原を特異的に検出することが示された。以上の結果、本抗血清は、ツル由来ヘルペスウイルス感染症の診断に有用であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツル検体からウイルス分離に成功し、次世代シークエンス解析による全ゲノム配列を決定した。また、ツルにおける本疾病診断に有用な免疫血清を作製した。以上の実績から、計画通りに研究が進捗してると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
分離されたヘルペスウイルスの家禽を含む鳥類に対する病原性を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
理由:本年度の研究計画が順調に進捗し、実験に使用した試薬の消費量が当初予定よりも少なかったため。 使用計画:今後予定している感染実験において、詳細なデータを得るための予算として適切に使用する。
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