2019 Fiscal Year Research-status Report
始原生殖細胞の発生・分化における代謝調節の役割の包括的解明
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19K06434
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 陽平 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (00588056)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 始原生殖細胞 / 代謝調節 / エピゲノム / 発生分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、環境要因を介した代謝調節の変化が、マウス胎仔期の始原生殖細胞の発生・分化にどのような影響を与えるかを包括的に解明することを目的とする。代表者はこれまでに、マウス始原生殖細胞の発生・分化に伴う代謝状態の変化について研究を進めてきたが、どのような代謝化合物・代謝経路がどのような分子メカニズムにより始原生殖細胞の発生・分化を制御するか、は未だ不明な点が多かった。そこで本研究では、培養下、様々な環境条件で始原生殖細胞の分化誘導を行い、始原生殖細胞の発生・分化に寄与する代謝系の包括的な特定を試みた。その結果、グルコース代謝の中でも特にヘキソサミン経路を介したタンパク質のO-GlcNAc化やセリン・グルタミン代謝が始原生殖細胞の形成において重要な役割をはたすことを見出した。 また、始原生殖細胞の前駆細胞であるエピブラスト特異的にO-GlcNAc化を欠損するようなノックアウトマウスを作出し、O-GlcNAc化の欠損が生体内での始原生殖細胞の形成や生殖細胞関連遺伝子の発現に影響を与えることを見出した。さらに、O-GlcNAc化の欠損が始原生殖細胞形成過程でのエピゲノム変化に影響を与える可能性を見出しており、グルコース代謝を介したタンパク質O-GlcNAc化の調節が生殖細胞形成に影響を与える分子メカニズムの解明も進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定では、2019年度には、(i) 始原生殖細胞の分化誘導培養における環境変化の影響の包括的スクリーニングを完了し、(ii) 生体内での始原生殖細胞分化における代謝調節の寄与の検証のためのコンディショナルノックアウトマウスの作出、および(iii) 環境変化による始原生殖細胞分化制御の分子メカニズムの解析の準備に取り掛かる予定であった。実際には、(i)だけでなく、(ii)のコンディショナルノックアウトマウスの作出および解析がほぼ終了し、(iii)の分子メカニズム解析にも着手できたことから、当初予定以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、現在進行しているO-GlcNAc化に関わるコンディショナルノックアウトマウスの解析、分子メカニズム解析を完了し、報告・発表するとともに、始原生殖細胞の形成に影響が見られた他の代謝調節系についても、同様のプロセスで研究を進行し、代謝調節が生殖細胞の形成に関わる分子メカニズムを包括的に明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
当初計画よりも少ない実験回で研究を成功に導けたため、次年度使用額が生じた。この助成金に関しては、次年度以降に行う予定のコンディショナルノックアウトマウスの解析、分子メカニズム解析のための消耗品費に主に充当する予定である。
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