2021 Fiscal Year Research-status Report
始原生殖細胞の発生・分化における代謝調節の役割の包括的解明
Project/Area Number |
19K06434
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 陽平 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (00588056)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 始原生殖細胞 / 代謝調節 / エピゲノム制御 / O-GlcNAc |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、環境要因を介した代謝調節の変化が、マウス胎仔期の始原生殖細胞の発生・分化にどのような影響を与えるかを包括的に解明することを目的とした。代表者はこれまでに、マウス始原生殖細胞の発生・分化に伴う代謝状態の変化について研究を進めてきたが、どのような代謝化合物・代謝経路がどのような分子メカニズムにより始原生殖細胞の発生・分化を制御するか、は未だ不明な点が多かった。そこで本研究では、培養下、様々な環境条件で始原生殖細胞の分化誘導を行い、始原生殖細胞の発生・分化に寄与する代謝系の包括的な特定を試みた。その結果、グルコース代謝の中でも特にヘキソサミン経路を介したタンパク質のO-GlcNAc化やセリン・グルタミン代謝が始原生殖細胞の形成において重要な役割を果たすことを見出した。さらに、始原生殖細胞形成過程でのエピゲノム制御因子のO-GlcNAc化がその安定性、活性の制御を通して始原生殖細胞のエピゲノム状態に影響を与えることを見出しており、グルコース代謝を介したタンパク質O-GlcNAc化の調節とエピゲノム制御のクロストークが生殖細胞形成に影響を与える分子メカニズムの解明も進めた。さらに、糖質代謝を低下させるような低糖質食を摂取した母マウスの胎仔における始原生殖細胞形成が低下し、その現象にもO-GlcNAcの低下、エピゲノムの異常が関与していることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定では、2021年度には、代謝調節による始原生殖細胞分化制御の分子メカニズムの解析を進める予定であった。実際には、グルコース代謝およびタンパク質のO-GlcNAc化による始原生殖細胞形成の制御機構を明らかにしただけでなく、低糖質食の摂取という生理的な条件下でも、胎仔中の始原生殖細胞形成に影響が出ることを明らかにし、栄養環境と胎仔の生殖細胞形成の関連を初めて明らかにした。そのため、当初予定以上に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、食餌によるグルコース代謝への介入の生殖細胞分化への効果を引き続き検証する。低糖質食摂取により始原生殖細胞形成段階で見られた変化が、その後の生殖細胞分化過程のどこまで持続して見られるか、さらにそれは次世代へも継承されうる変化なのかを追跡調査していく。また、始原生殖細胞の形成に影響が見られた他の代謝調節系についても、同様のプロセスで研究を進行し、代謝調節が生殖細胞の形成に関わる分子メカニズムを包括的に明らかにしていく。
|
Causes of Carryover |
当初計画よりも少ない実験回で研究を成功に導けたため、次年度使用額が生じた。この助成金に関しては、次年度以降に行う予定の食餌介入による始原生殖細胞形成の制御解析、および生殖細胞分化や次世代個体への影響の解析のための消耗品費に主に充当する予定である。
|
Research Products
(7 results)