2021 Fiscal Year Research-status Report
トランスグルタミナーゼを標的とした神経変性疾患の発症機構解明
Project/Area Number |
19K06441
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
高野 桂 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (50453139)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トランスグルタミナーゼ / ミクログリア / アストロサイト / アルツハイマー病 / 神経変性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛋白質の架橋結合形成酵素であるトランスグルタミナーゼ(TG)はヒトでTG1~TG7と血液凝固第13因子が知られており、皮膚の角質化や血液凝固など生体内で様々な生理作用を持つ。中でもTG2は全身の様々な組織に発現しており、細胞の増殖や分化、炎症反応などに関与することが報告されている。アルツハイマー病などの神経変性疾患において、脳内でのTG2発現上昇や疾患に特徴的な凝集体形成へのTG2の関与が報告されており、疾患の発症・増悪への関与が示唆されている。一方、脳の正常な機能には神経細胞(ニューロン)以外にグリア細胞(アストロサイト・ミクログリア・オリゴデンドロサイト)の働きが重要であり、その機能異常は疾患の発症原因ともなり得る。本研究ではこれまで、アストロサイトやミクログリアを実験的に活性化した際にTG2発現とTG活性が上昇し、一酸化窒素(NO)産生や貪食能に関与することを報告した。アルツハイマー病の脳内に見られる凝集体の構成蛋白質アミロイドβ(Aβ)は、高濃度になると凝集体を形成し神経細胞死を誘導したりグリア細胞を活性化したりすることから、その蓄積が疾患の発症・増悪に関与すると考えられている。グリア細胞は脳内でAβの除去に寄与することが知られており、培養アストロサイトにAβを添加すると、時間経過とともに細胞外のAβは減少した。Aβをアストロサイトの培養上清と混ぜると凝集体形成が促進され、その凝集体形成はTG阻害剤で抑制された。また、神経細胞とグリア細胞の混合培養系にAβを添加すると、AβはTG2との結合を介してミクログリアに取り込まれ、ミクログリアの活性化が認められた。したがって、アストロサイトおよびミクログリアの活性化にTG2が関与すること、TG2の発現または機能を調節することができれば、グリア細胞の機能調節を介して、アルツハイマー病の改善につながる可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の蔓延が長引き、かつ所属機関内での陽性者の自宅待機などにより、実験の実施に遅れが生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ対策は十分に実施している状況のため、複数のメンバーで実験を実施し、遅れをカバーできるようにする。
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Causes of Carryover |
実験の実施に遅れが発生したこと、また、新型コロナウイルス感染症の影響により学会がオンラインでの開催となり旅費を必要としなかったことなどにより、次年度使用額が生じた。次年度に物品費として使用する。
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Research Products
(3 results)